幸福な結末 辻仁成  角川書店 2005年5月


ブリュセルに住むヴァレリーは、角膜移植をした後、幻影が見えるようになる。
幻影の男は、じっと、自分を見つめ、時々カメラで、撮影したりしようとする。
この角膜の持ち主だった女子大生が見つめているものが自分にも見えるのだと思ったヴァレリーは、幻影の男性ナツキを探すために、東京に旅立つが・・・・・・


<光を無くしていた時こそ、、実は一番光を感じていたようなきがします。>
せっかく、角膜の手術をしたのに、この言葉は、悲しい。
人は、目に見えるものではなく、心の奥を見るようにしなければいけないのだと思う。


ヴァレリーは、目が見えるようになったということは、世界が変わったと思う。
それが、幻影が現れるのだから、その原因を突き止めたくて、ナツキを追いかけ、次第に惹かれていく気持ちは、わかる。
ナツキは、愛した女性を見ているのか?ヴァレリーを見ているのか?
私には、ナツキとヴァレリーの関係は幻影の世界で、現実ではないような気がする。


ヴァレリーが、ブリュッセルで、いつ来るかわからないナツキを待っている姿は、恋する女性の切ない気持ちが伝わってきた。でも、この話に登場する男性は、なにか、好きになれないなあ。


誰もが、幸福な結末を願っている。けど、現実はどうなんだろう?
心の辞書と題して、時々挿入される言葉は、作者の感性を味わえた。

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