こんにちは


吃音の現実を突きつけられる記事がまたでました。


「言葉の苦しみ ともに 吃音のある言語聴覚士」西日本新聞


記事の内容はとてもさわやかな印象を持つ書き方でとても好感が持てます。

しかし、その内容をよくよく考えると吃音の現実が浮き彫りになります。





吃音を治療する側である言語聴覚士ですら、吃音の認知がされていない現実。

言語聴覚士の国家試験を受ける際に、吃音について講義はあるそうですが、国家試験の出題数はたった1問程度。

つまり、日本の言語聴覚士は吃音を勉強しなくても試験には合格できるのです。

吃音の治療をする際には、言語聴覚士の先生にお願いすることが多いですが、現実は治療できる言語聴覚士の先生はほんの一握りなんです。





そして、この記事。


私はこのMさんと直接お会いし、お話もしたことがあります。

笑顔が素敵で人当たりの良い好青年でした。

私は、言友会(吃音症のセルフヘルプグループ)の機関誌を読んでMさんの境遇を知ったのですが、ただただ驚きばかりでした。


なぜMさんが20代で2回退職せざるをえなかったか。



しかも2回目は吃音の専門家とする言語聴覚士という立場であってさえ。。


これは、案に吃音の認知度の低さを露呈するだけでなく、吃音を持つことによる社会での生き難さを現していると思います。

笑顔が素敵な彼が「いらっしゃいませ」が言えないことで仕事を辞めざるをえない現実。

非吃音者の私たちにこれが、簡単に想像できますでしょうか?



私もそうでした。
吃音を持つ方が非吃音者に挨拶ができないと相談すると、往々にして「笑顔で会釈をすればいいよ」なんて安易なアドバイスをしていまいます。


気心が知れた仲であればいいと思いますが、
笑顔ではすまされない現実があるのです。

日本は殊更に挨拶は礼儀などと、挨拶の大切さを言います。

なのに、相談されても理解されない。




失望を超えていつか絶望へと。




今回、記事になったMさんは上司に恵まれ、なんとか再起の道をたどることができました。



どうか、そうでない方々もいることを知って欲しいです。




どうかお願いします。








また、いつか削除されると思いますので全文添付しました。
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言葉を流ちょうに話せない吃音(きつおん)のある青年が言語聴覚士になり、脳梗塞で失語症になった人の発声訓練を支えている。これまで約50人の患者を担当した。自分が学校や職場で思うように言葉が出ず苦労した経験から、言葉がなかなか戻らない患者たちに優しく語りかける。「焦らないで。話し方より何を伝えるかが大事ですよ」
  言語聴覚療法室。鏡に向かって口を動かす80代の患者の隣で、Mさんは手本を示して発声を導く。
  「次はお礼の言葉いきましょう。ありがとう」「ありがたう」「いい声です。感謝が伝わってきますよ」  担当するのは脳梗塞や交通事故で言葉を失った人たち。思うように体が動かない悔しさを、言葉でぶつけることすらできない。Mさんにはその心の痛みがよく分かる。
  物心ついたときから「ぼ、ぼ、僕は」などと同じ音を繰り返す吃音があった。小学校では友達にまねされ、からかいの対象に。中学に入ると特定の音に詰まるようになった。音読や意見発表では言葉が出ない。高校、大学時代はかばってくれる友達もいたが、就職すると事情が変わった。
  最初の就職先は福岡市内の量販店。「いらっしゃいませ」の決まり文句が流ちょうに言えない。連日の居残り練習で追い詰められ、2カ月で退職した。吃音について調べる中で、専門職の言語聴覚士に興味を持った。専門学校に2年間通って国家試験に合格。だが、2年前に就職した別の病院では吃音を改めるよう上司に言われ、半年でやめた。  河畔病院は昨年4月、そうした経緯を知った上でMさんを受け入れた。「決め手は専門学校生として研修に来た際の仕事への姿勢だった」と上司は明かす。「勉強熱心で分析能力も高い。吃音が業務に全く影響しないわけではないが、苦労した彼だからこそ、患者さんの気持ちをくみ取れる」
  定型の言葉を語り、患者の理解度を測る訓練が苦手だったが、回を重ねて慣れた。濁音で始まる「土曜日」など出だしで詰まりそうな言葉は「○日」と置き換える応急処置も身につけた。患者や家族から吃音を指摘されたことはない。
  吃音者でつくる全国言友会連絡協議会によると、吃音はおよそ1%の人にあるが、原因ははっきりせず、確立された治療法もない。協議会の調査では、253人中197人が「吃音のために仕事で苦労した」と回答。学校でいじめられて引きこもりがちになったり、面接が苦手で定職に就けなかったりする人もいる。
  Mさんも吃音は十分に治らなかったが、これまでのつらい体験があったから今がある。「失意の底にいる患者さんが、自信を取り戻す手助けをしたい」。少し突っ掛かりながらの言葉は力強かった。
  =2013/11/28付 西日本新聞朝刊=