どうも、はむばねです。

今日の艦これチャレンジ!



はい、黒幕大淀さん!
いいじゃない! さーんきゅっ!(瑞鶴並感)
おっけー、コンプ率5割きたよー!
こらもうゴールも近いですね(慢心
現在のコンプ率:5/10(那珂2、北方棲姫2、集積地棲姫2、時雨1、大淀1)



さて、それはそうと読んだ本の感想です。

本作もちょっと古め(2009年)ですが、「そうだ、作者買いしよう」と思って買ったものです。
といっても、うえお先生の作品は『悪魔のミカタ』と『シフト』しか読んでないのですけれど。
しかも、『悪魔のミカタ』は途中から読めてないという……。
無印は全部読みましたが、666になってから読めてないんですよね……。
3巻くらいまでは買ってはあるんですけれど……。
あと、シフトの続刊はまだですかね……?
私もクリアを待ってるんですけども……。

閑話休題。
ネタバレは……あんまりしないようにしようかと思いましたが、ネタバレせずに感想を書くことは不可能と判断し結構根本的なネタバレをします。
中盤のネタバレですが、それ以前と以降で読み味がガラッと変わるため、これから読む予定の方は本記事は一端読まれないことをオススメ致します。

紫色のクオリア (電撃文庫)
うえお 久光
アスキーメディアワークス
売り上げランキング: 31,614


人間が「ロボット」に見えるという少女、毬井ゆかり。
これは不思議な紫色の目をもつ毬井ゆかりと、『あたし』波濤学(ハトウ・ガク、通称ガクちゃん、♀)が織りなす、日常の物語。






……では、全くない。
いや、序盤はそうなんですよ。
というか、全3章構成(ラストはほぼエピローグなので実質2章構成)の1章についてはそこそこそんな感じで。
1章のラストも結構衝撃なんですが、まぁ日常+事件、って感じ。
どうも、ここまでが元々電撃マガジンに載った短編のようですね。
ほんで、書き下ろされたのが第2章(中編)。
ここから、物語はガラッと様変わりします。

この先、ネタバレ注意です。
一応クリティカルな部分は反転させますが、その先もそのネタバレありきで書いているのでご注意ください。







============================= ネタバレここから =============================
ある時、天才少女アリス・フォイルが転校して来た。
彼女は、ゆかりの「目」の事を知った、天才を保護する海外の組織「ジョウント」に勧誘するために来たのだった。
迷った末、ゆかりは結局「ジョウント」のスクールへと転校することを決める。
それからしばらくして、ゆかりは死んだ。
ゆかりに「修理」された際に携帯電話を身体に組み込まれた結果「平行世界の自分」たちと交信できるようになっていたガクは、あらゆる可能性の世界の「自分」たちと情報交換し、ゆかりの死の真相を探り始める。
その過程で、ガクは自身の能力について更なる理解を深め、「現在」の可能性を取捨選択することで「過去」も変えることが可能であると知る。
しかし、何度過去を変えてもゆかりは死んだ。
マナブは平行世界を渡り、無限の試行を繰り返す。
ゆかりを取り戻す、ただそれだけのために。

============================= ネタバレここまで =============================


うおぉぉぉぉぉ!? うえお先生「っぽさ」がハンパねぇな!?
いや、っぽいも何も本人なんで当たり前なんですけども。
ただ、シフトの時はそんなに感じなかったし、悪魔のミカタも後半になるにつれて薄れていってた気がするんですよね。

「失われたヒロインを取り戻す」って構図も、悪魔のミカタの時と同じですしね。
そして、なんというかこう、主人公の意思の強さといいますか。
何がなんでも目的を達成せんとする、ある種の……いやもう、普通に狂気じみた主人公の執念が、実にうえお先生らしい。
悪魔のミカタでいう、「 一番の願いをかなえるために二番目以降の全てを捨てる」覚悟ってやつ。
というかなんだかんだで堂島コウさん(悪魔のミカタの主人公)がこの点についての葛藤もあったのに対して、ガクちゃんの思い切りっぷりがすげぇ。
マジで、2番目以降の全てを切り捨ててる。
他人も、自分も、未来も、過去も、文字通り全部捨ててる。
ゆかりを取り戻すために、人も殺すし、騙すし、脅すし、泣き落とすし、自分だって殺す。
最終的に、ホントに文字通り「自分」という存在すらも消してるからね。
この点、「恋人」を取り戻すために戦ってたコウさんの方がまだ人間味が感じられる。
#まぁ、言うてコウさんはちょいちょいそこそこ人間臭かったけども。
「友達」を取り戻すために全てを投げ打つガクちゃんの断固たりすぎる決意が恐ろしく、そして暖かいです。

ちなみに、いわゆるタイムリープものに当たるのだとは思いますけれど、単純なタイムスリップものではありません。
知識が浅いので具体的な言及は避けますが、量子力学を中心に、SF的な要素が盛り沢山です。
というかダ・ヴィンチに取り上げられるなど、SF的な評価も高いみたいですね。
しかしSFを齧ってないとチンプンカンプンとか、そういうことはありません。
似非理系たる私にも理解出来る程度に、ちゃんと説明してくれてます。
まぁそれらが本当に(学術的に)合ってるのかは存じ上げないのですが、少なくとも読んで「ほーん」と納得できる程度には上手いこと騙してくれてます。
この辺りのハッタリの効かせ方も、実にうえお先生らしいですね。
もっとも、私に理解出来る程度なので、ハードSF読みの方とかからすれば物足りないのかもしれませんけれど。

まーしかしね、特に後半のドライブ感がハンパないです。
前半は、むしろスローリィで「あ、日常系の物語なのかな?」と思わせるんですけどね。
実に鮮やかな騙し方である。
時系列とか、「どの」世界の話なのかが結構ごっちゃに描写されて、混乱しそうになるんですけどもちゃんと振り落とされないように書かれているのは流石。
そしてそのごっちゃ感が、ガクちゃんの中で「自分」がごっちゃになっていく過程を読者が追体験できてるようで、ドライブ感に繋がっているのだと思います。
あらゆる可能性の中で酷い事をして、酷い事をされて、自分ですらなくなって、削ぎ落とされて、それでもゆかりを取り戻すためだけに、ただただ最適を求める様が物凄いスピードで展開されて。
どう見ても喜劇的なのに、悲劇的にしか見えない展開があって。
そうして辿り着いた終着点と、それに対するゆかりの反応もとても良かったです。
ラストは若干賛否分かれそうですが、個人的には、うん、良かったと思う。

まぁなんというか、本作にはいわゆる「萌え要素」は基本ないと言っていいでしょう。
「燃え」要素も、普通の意味においては全くありません。
コミカルなキャラも、軽妙なやり取りも、ほとんどない。
一般的な意味における山場さえもないと言っていいかもしれません。
しかしそれでも、可愛くて、熱くて、おかしくて、悲しくて、楽しくて暖かい物語だったと思います。

ちょっとなかなかない読み味だったと思いますので、合う合わないはあるかもしれませんが、差し当たり読んでみていただきたい一作ではありますね。
ただし前述の通り中盤でガラッと印象が変わりますので、前半が合わなくても出来れば2章までは読み進めていただきたいところであります。