どうも、はむばねです。
24時間耐久読書&感想更新!
第! 8! 弾!
ついに! ラストです!


大魔王ジャマ子さんと全人類総勇者 (角川スニーカー文庫)
岬 かつみ
KADOKAWA/角川書店 (2014-07-31)
売り上げランキング: 827,127


あらすじはAmazonより抜粋。
>俺の名は浦島ヒロト。
>ある日、家で寝てたら勇者の記憶が復活して俺歓喜―のはずが、実は全人類が勇者でした!?
>自分こそがナンバーワンな人類は、みんな仕事を投げ出して地球はもう滅亡寸前。
>そんな時、家のトイレにかつての宿敵・大魔王ジャーマが現れた!!
>このタイミング、変わり果てた姿(♀×全裸)、怪しすぎるぜ。
>お前の狙いは何だ、ジャーマ!
>でもその前に―まずは服を着ろォ!
>第19回スニーカー大賞“優秀賞”受賞作!!


え、なにこれめっちゃ面白かったんですけど。
眠気も吹っ飛ぶ面白さ。
いや、もしかすると眠気故にハイになった気分が面白さを増長している可能性も微レ存ですけれども。

いやしかしそれを差っ引いても、非常に良質の発想系コメディだったと思います。
人類全員が伝説の勇者としての記憶を思い出すってのも面白いですが、その結果社会崩壊が起こるってのがまた面白いw
なるほどね、確かにそうなるよね。
かつて勇者として華々しく活躍したことを思い出せば、現代社会で地味な歯車に戻れないかもね。
リアル「こんなとこ俺の居場所じゃねぇ!」状態ですもんねw

あと、魔王が女の子って設定は今時特に珍しくもないですが。
#当ブログの読者様にとってもたぶんお馴染みですね!
地味に、その理由についても語られててワロタw
なるほど、最強種だから遺伝子情報を頻繁に残す必要がないためオスの存在は希少と。
突っ込むとなんかおかしいのかもしれませんが、一読する限りでは「はーなるほどねー」って感じ。
色々と設定細けーなw

そんで、出現した魔王と勇者の初戦はパンツ攻防戦w
パンツを履かせたい勇者VS頑なに履きたがらない裸族の魔王、の図です。
そして、その決着は魔法少女がパンツに生命を与えて自らの意思で魔王に履かせることで解決。
字面だけでカオスすぎるw
しかも、この後パンツが普通にレギュラー化するというカオスっぷりです。

その後もゴミに生命を与えて勇者の敵とすることで現代社会のゴミ問題を片付けたり、街中のトイレットペーパーを買い占めてそれを盾にすることで攻防戦を繰り広げたりと、非常にバカバカしくも、しかし理に叶った展開が続きます。
そう、凄く理に叶ってるんですよ。
もうホントにクッソバカバカしくて、このバカバカしさのレベルも相当なもんなのですが、個人的にはそれに理を付与したのが最高評価ポイント。
ゴミ問題を解決した勢いで再生可能なゴミまで消しちゃったためにトイレットペーパーの原料がなくなり、結果トイレットペーパーが超貴重になったため、それを盾にされると如何に強大な力を持つ勇者たちでも手を出すことができない、とかね。
遊んでばっかいるように見えた魔王に培われたシューティングゲームの知識が、勇者を撃退する弾幕に繋がってたり。
一見関係ないバカバカしいエピソードの数々がなんだかんだで最終的に全て繋がる様は、非常に美しいです。
ホントにクッソバカバカしいことを、アホほど真面目に考えてる感がビシビシ伝わってくる。
本当は一つ一つエピソードについて語っていきたいところですが、時間もないのでそれは自重します。
是非とも、実際にお読みいただきその目で確かめていただきたい。

そんで最後はなんやかんやあって、72億の魔王VS72億の勇者の総力戦的な展開になるんですけども。
この展開が、クッソ熱いんだ。
いやもう、敵も味方もほとんどポッと出ばかりなんですよ?
せいぜいが、どっかで一行出てきた程度の。
でも、「おぉ、あいつも来てくれたのか!」「ここでヤツが!?」など、まるで本当に見知った作品たちの大クロスオーバーを見ている気持ちになります。
そして、からの、パンツ!
パンツの覚醒!
覚醒しても「ぱんつ!」としか言わないパンツことヴォルガルムさんマジかっけー!
バカバカしい、でも熱い!
熱い、でもバカバカしい!
最後の最後の最後の最後までその温度感を失わない作劇が素敵すぎるぜ!
ラストの展開も、個人的には最高にグッド!

いや正直、これに関しては時間制限のある今回の企画の中で感想書いて良かった。
でないと、際限なく色々と書いてしまいそうです。


本作よりもバカバカしくて笑える作品、本作よりも美しく練られた構成を持つ作品、どちらにも心当たりはあります。
しかし本作ほどバカバカしくも美しく構成された作品にはちょっと覚えがありませんね。
昔のスニーカーらしい作りこまれた設定と、最近のスニーカーらしいキャッチーさ。
両者がうまーいこと融合した、新しいスニーカーの形の萌芽と言っても良いのではないでしょうか?
これからのスニーカーを背負って行ってもらいたいレベル。
うん、私はどこから目線なんだよって話ですが。



さて、今回もあんまりべた褒めしすぎるとなんかバランス取るためにマイナス方向の事も書かないといけない気がしてくる病を発症して、あえてちょっと書きます。
まず、私が散々べた褒めした構成の美しさ。
ぶっちゃけ、これを評価対象にしてる人ってのはあんまりいないと思います。
そしてその点を外すと、表面的にはまぁ一風変わったドタバタコメディだよねって感じになるかも。
そして個人的にはその美しさゆえに評価した終盤のコメディシリアス展開も、人によっては蛇足的な印象を受けるかもしれません。
あと、ぶっちゃけストーリーラインは良くも悪くも奇を衒った作りではありません。
コメディ部分も、ゲラゲラ笑えるというほどの力を持つわけでもない。
なので、人によっては「それなりによく出来たコメディの凡作」程度にとどまるかもしれません。
個人的には、奇を衒うでもない素朴な素材を精緻に磨き上げた傑作って感じなんですけどね。