「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8」感想 | self-complacency

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ライトノベルの感想を書いてました。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 イラスト集付き限定特装版 (ガガガ文庫)/小学館

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後味の悪さを残した修学旅行を終え、日常に戻った奉仕部。そんな折、奉仕部に生徒会長選挙に関わる依頼が持ち込まれる。お互いのやり方を認められないまま、奉仕部の三人はそれぞれが別のやり方で依頼に対することに。分かっていた。この関係はいつまでも続かないことも、自分が変わることができないことも。「君のやり方では、本当に助けたい誰かに出会ったとき、助けることができないよ」その行動は誰のために……。それでも自分のやり方を貫き、もがこうとする“彼”は、大きな失敗を犯してしまう――。

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六巻に並ぶ素晴らしい出来。一文一文噛みしめるように読ませて頂きました。ページ数も多くて大満足。

修学旅行という大きなイベントも終わり、再びいつもの日常へ。
クラスメイトたちとは異なり、八幡の胸中は晴れない。小町や平塚先生に指摘されてもそれを認めず、認めないことで自分は普段通りであると思い込ませようとする。意識しないようにしていることこそが何よりの答えだと言うのに。
平塚先生に呼ばれ奉仕部の部室を訪れたのは、めぐり先輩と見慣れない女子生徒。誰かと思えばそれはいつぞやのサッカー部マネージャー、一年の後輩一色いろはだった。「求められる自分」をうまく使い分け演じるゆるふわビッチな一色いろはから八幡は言い表し難い危険さを感じ取る。だが、依頼を無下には出来ない。「生徒会長にならないようにして欲しい」という依頼を請け負い、解決のために奉仕部は再び動き出すように見えたが……?

修学旅行の一件からそれぞれがモヤモヤを抱えながらも、そのことを気にせず元の日常に戻ろうと務める。そんな様はどこか空虚で痛々しくも見えた。そして平塚先生を通して新たに奉仕部へと持ち込まれた生徒会長選挙に関する依頼。八幡と雪乃、二人の意見は一致しないし自分の考えを曲げることもない。ならば必然、別れて行動することに。当初から続いていた“勝負”の結果を持ち出したことをきっかけに、雪乃、結衣、八幡はそれぞれ違うやり方でもって依頼の解決を目指すこととなる。

朝方、小町と喧嘩のようになってしまったため、家に帰るのはなんだか気まずい。そこで、八幡は寄り道をしてから帰ることに決める。映画を観るまでの時間潰しにと入ったドーナツショップにて、陽乃さんに出くわしてしまい焦る八幡。馴れ馴れしく話しかけてくる陽乃さんを冷静にあしらいながら、どうにかこの場を離れることは出来ないか、と思案を巡らせる。しかしそのとき、思わぬ人物が姿を現したことで、思考が停止する。他校の制服を来たその人物はなんと中学時代の同級生、折本かおり。八幡が告白し、フラれた苦い思い出を持つ相手その本人であった。

昔フラれた相手に出くわした挙句、周りの人間にそのことを言いふらされ笑い者にされるとかどんな罰ゲームだよ…… 僕だったら正気じゃいられない。しかし今の八幡は中学のときとは違う。一つ一つの言動に意味は見出さない。苦笑でそれとなく相手に合わせることでやり過ごし、話題が変わるのを待つ。ほんと、捻くれた成長の仕方だよ。

折本たちと遊びに行く件で一緒に来て欲しい、と葉山から頼みこまれるも八幡は拒否。ところが陽乃さんから電話で半ば脅される形となり、仕方なくそれについて行くことに。映画をみ、買い物をし、腹ごなしにと入ったカフェにて。八幡を馬鹿にする折本達へ葉山は否定的な言葉を投げる。そこへ何故か雪乃と結衣が現れて……?
葉山隼人というキャラクターが巻を重ねる毎にいい味を出していてもうすごい好き。八幡との対比という単純なところだけでなく、それぞれの立場、考え、言動を並べてみるとその違いがよく分かってまた面白い。
ぼっちとは孤高の存在であり、誰にも迷惑をかけないし他人を頼らない。というのが八幡の矜恃。自分でなんとかするしかないからそうしたまでで、誰かを助けるなんて高尚な思いで動いていた訳じゃない。だから感謝される謂れもないし、自分を犠牲にしているつもりもない。いかにも彼らしい論だ。「下に見て可哀想だと思うのはやめろ」。葉山とのやり取りの中ではそのフレーズが特に印象に残った。
葉山がもしかしたらこちら側に近付いてくれたのかもしれないと一瞬思った。でも、結局は理解していなかった。その事実を八幡が残念がっているように見えたのは気のせいかしら。

雪乃が生徒会長になってしまえばそちらの仕事に追われ、結果奉仕部はなくなってしまう。そう考えた結衣は自らが生徒会長になれば奉仕部の関係は続けられるはず、と生徒会長選に立候補することを打ち明ける。結衣の涙とその想いにこちらも泣きそうに……(ウルウル

家族はともかく、雪乃や結衣が相手な今、自分が頼れる人間なんていない、そう考えていた。問題の解決方法を模索し図書室を訪れていた八幡の前に現れる材木座。そして、八幡は材木座に相談を持ちかけることを決意する。ここのやり取りには痺れた。「材木座のくせにかっけぇ……!」と感動したほど。
八幡のピンチを戸塚か材木座辺りが本筋に絡む形で助ける展開になったら熱いなあ、と以前から妄想していたから、それ以上の展開になってテンション上がりまくり。

それでも足掻いてみせる、と言ったシーンは八幡らしくて良かったなぁ。責められる対象をネットの向こうに作り出すことで、傷付く人間を出さずに済む。それが八幡の考えた今までの自分のやり方とは違うやり方。しかし、そのやり方も彼女が求めたものではないのだと思う。小町も薄々気付いてたみたいだし。雪乃や結衣に勝つなんてとてもじゃないが出来そうにない。ならば根本から覆す。八幡の発想力には驚かされるばかり。

時間が経てば人は変わる。そして人と人との関係も、些細なきっかけで崩れ去る。自分は初めから変わっていない。八幡はそう思い続けているけれど、雪乃や結衣と出会い、人と関わっていく中で確実に比企谷八幡という人間は変化しているように僕には見える。奉仕部という部活を、関係性を失いたくないと願う気持ちが少なからずあったのではないかな、と。

全てを終えた結果手にいれたのは理想とは程遠い、望んだものとは大きく異なる薄っぺらな関係。それは雪乃や八幡が一番嫌っていたものだったはずなのに。

自身の変化を認めないこと、スタンスを変えないこと、他者(自分たち)を頼ろうとしなかったこと。そこら辺しか思い浮かばないんだけどなんかしっくり来ないんだよなぁ…… はっきり言って僕の知能レベルじゃ八幡の捻くれた思考にもついていけないし、雪乃の想いを読めもないのよね。だからこそ面白くもあるんだけど。
雪ノ下姉妹と葉山の過去の関わりについても明かされて欲しかったんだけどなー。雪ノ下家についての話が全然出てこないのも意識してそうしてるのかしら?

こんだけ面白いんだもん、そりゃこのラノ1位も取りますわ。おめでとうございます!
もう以前と同じではなくなってしまった奉仕部メンバーの関係。果たしてその行く末とは? 物語が佳境へ向かっている雰囲気をひしひしと感じる。続きが非常に楽しみです。

今回のぽんかん神の挿絵の神っぷり尋常じゃなかった。物語のシリアスな雰囲気がしっかり絵で表現されていて素晴らしい。
限定版付属本、あーしさんこと三浦が水着で興奮した。何あれエロい。あと私服ゆきのんが可愛くて幸せ。