東京都の青少年健全育成条例の改正案では、児童ポルノの単純所持禁止規定が削除された。また、「まん延の防止」という表現も削除している。旧改正案と比較すれば、児童ポルノの関係条文は、旧案に反対だった民主党に大幅に譲歩しているように見える。児童ポルノの規定を緩める変わりに、漫画規制を拡大した、という取引なのか?と思うくらいだ。

【第十八条の六の二 児童ポルノの根絶に向けた都の責務等】

 都は、児童ポルノを根絶すべきことについて事業者及び都民の理解を深めるための気運の醸成に努めるとともに、事業者及び都民と連携し、児童ポルノを根絶するための環境の整備に努める責務を有する

 という旧改正案だが、

 都は、事業者及び都民と連携し、児童ポルノを根絶するための環境の整備に努める責務を有する。

 都民は、児童ポルノを根絶することについて理解を深め、その実現に向けた自主的な取組に努めるものとする。

 とに分けた。都民の自助努力をなぜここで入れたのか。旧改正案では、都が主体だったが、新改正案では、都民も主体となる努力義務を課している。都民が主体となる理由はなにか。これは、もしかすると、児童ポルノの単純所持禁止の規定を外したこととのセットなのかもしれない。

 旧改正案には

 【第十八条の六の四 児童ポルノ単純所持禁止等】
 何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。

 2 都民は都が実施する児童ポルノの根絶に関する施策に協力するように努めるものとする。

 3 都民は、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきではないことについて理解を深め、青少年性的視覚描写物が青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するおそれがあることに留意し、青少年がこれを閲覧又は観覧することのないように努めるものとする。

 という条文があったが、削除されている。

 しかし、前回の六月定例会で問題になった、

 2 都は、青少年性的視覚描写物をまん延させることにより青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきではないことについて事業者及び都民の理解を深めるための気運の醸成に努めるとともに、事業者及び都民と連携し、青少年性的視覚描写物を青少年が容易に閲覧又は観覧することのないように、そのまん延を防止するための環境の整備に努める責務を有する。

 は、削除した。「まん延の防止」という文言は批判が多かったためであろう。

 一方で、ジュニアアイドルの規定は残している。

 新改正案の【第十八条の六の三】
 保護者等は、児童ポルノ及び青少年のうち13歳未満の者であつて衣服の全部若しくは一部を着けない状態又は水着若しくは下着のみを着けた状態(これらと同等とみなされる状態を含む。)にあるものの扇情的な姿態を視覚により認識できることができる方法でみだりに性欲の対象として描写した図書類(児童ポルノに該当するものを除く。)又は映画等において青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し、青少年が児童ポルノ及び当該と書類又は映画等の対象にならないように適切な保護監督及び教育に努めなければならない。

 ここで、なぜ「13歳未満」なのかは、刑法の性的自己決定権によるものであろう。13歳になれば、性的自己決定が認められる。そのため、ジュニアアイドルの規制も、この「13歳未満」とするしかない。

 しかし「青少年が性欲の対象として扱われることが青少年の心身に有害な影響を及ぼすことに留意し」とあるのだが、それに因果関係があるのかどうか。エビデンスがあるのかは不明だ。

 ただ、旧改正案と違っている点がある。旧案では「性的対象」と使っていたが、新案では「性欲の対象」に変わっていた。これは何を意味するのか。


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