“カーボンフットプリント”という言葉があります。
直訳すると、炭素の足跡。商品やサービスが、生み出されて消費者の手に届くまで、あるいはさらにその先の使用や廃棄までのCO2排出量をこう呼びます。

従来は、“LCA”というフレーズで表現されることが多かった考え方ですが、
・LCAは対象とする環境負荷がCO2には限定されない
・LCAの評価対象と言えば、電子機器や自動車というイメージがついてしまった
という状況を受け、
・対象とする環境負荷をCO2に限定し
・評価対象の製品を、食品や日用品にまで拡大する
ことを意図し、新たに“カーボンフットプリント”というタームが導入されたようです。

タームが生まれたのはイギリス。
アングロサクソンは、昔からあるアイデアを、新たな角度で切り出してあたかも新しい概念であるかのように打ち出すのが得意ですよね。まったく、感心します。

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さて、この“カーボンフットプリント”、国内の食品・日用品メーカーや小売業も導入しようという動きが活発になっています。

一番話題になったのが、6月にニュースリリースされたサッポロビールの黒ラベルでのカーボンフットプリント表示の試みです。→ http://www.sapporobeer.jp/CGI/news/index/1283/
カーボンフットプリント
(サッポロWebサイトより)

サッポロに半年先駆けてニッポンハムが「エコビーフ」という名称で、カーボンフットプリントと同義のライフサイクルCO2の算出・公表をしていたこともあらためて知られるようになり、食品・日用品メーカーや小売業が「うちはやらなくていいのか?」と騒ぎ出すようになっているようです。

エコビーフ
(エコビーフの「製品環境情報」)
http://jemai-live.ashleyassociates.co.jp/JEMAI_DYNAMIC/data/current/prodobj-1851-pdf.pdf

特に日経新聞がやたらと記事にしたのが影響があったようですね。
環境担当部門やCSR部門の長が、社長に呼ばれ、「カーボンフットプリントというのがあるらしいが、うちはどうなってるんだ?」と問われるシーンが、多くの企業で展開されたらしく、お客さんからの問い合わせが急増しました。

こうした問い合わせに対応するのは、わが部のLCA部隊。
私も入社以来3年間はこの部隊で多くのLCA案件を手がけましたが、最近は、より川上の環境戦略・環境経営のコンサルティングをメインにし、LCA部隊からは独立。個別のLCA案件は受けないことにしていました。しかし、今年のカーボンフットプリント実施支援の依頼は、例年のLCA依頼件数の有に3倍。今のLCA部隊では捌き切れなくなり、“卒業生”の私も再度ひっぱりだされることになった次第です。

もっとも、川上の環境戦略・環境経営のコンサルティングも引き合いも去年に比べたら2倍程度に増加しています。本来ならば、再度LCA業務に携わるのは不可能な状況。しかし、幸いなのか何なのか、こちらは出向先から復帰した先輩のおかげで、1(はみ唐)+1(先輩)=3、くらいの作用で比較的余裕を持って対応できるようになっています。

古巣のLCA部隊からは、そこを指摘され、上司指令もあり、今年の夏は、久しぶりにLCA実施支援=LCAトレーナーとしての業務にも復帰することになりました。

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さて、今月に入って、私が主担当のLCAトレーナーとしてキックオフをした企業は、早くも3社。今月後半にかけて、さらに3社が増えることになりそうです。LCA部隊時代でも、一度にこんなにたくさん受け持ったことはありません。
まさにカーボンフットプリントの季節です。

ここまでの過熱は正直どうかと思います。
食品・日用品のライフサイクルCO2にどれだけの意味があるか、という点でも個人的には若干疑問を持っています。(食品業界が今後最重視すべきテーマは、CO2よりも、食材そのものの安定的確保であるべき、と思います)
しかし、企業が「経済性」や「安全性」、「品質」以外の視点で自社のサプライチェーンとビジネスフローを見直し、正確に把握する機会となるという点では、社会的な意義はあるでしょう。

そう考えて、 頑張ってみようと思います。

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今年や来年、皆さんも目にするかもしれない、食品・日用品の“カーボンフットプリント”。そのうちのどれかは、私が関わったものかもしれません・・・。