平安三段などに見られる「内受け下段払い」。
結び立ちになって片手は内受け(横受け)、もう一方は下段払い(払い受け)を同時に繰り出すあの技法は、昔は「こんなに使えない技はない」と思い込んでいましたが、最近になって本部朝基や摩文仁賢和の著作を読むようになり、認識が変わってきました。
あれは極めて実践的な技法なんですね。
<平安三段の内受け下段払い>
http://www.youtube.com/watch?v=N_ulfdFXmck
手を逆にして二度目の内受け下段払い。
(右手:下段払い、左手:内受け)
常に相手の攻撃をアウトサイドに入り身して捌けき反撃できるなら理想的ですが、現実にはなかなかそうもいきません。往々にして、インサイド、つまり相手が左右の手足を使って次々に攻撃を繰り出せるポジションに、身を置かざるを得ない局面が発生します。そうした局面で相手の攻撃を見切ることは至難。とっさに、内受け下段払いを行うという対応は、顔面や腹部、金的への攻撃を防ぐ最も確率の高い方法なのでしょう。
しかも型の中にある内受け下段払いは大抵二回。
これもインファイトとなると素人でも連打を繰り出す現実への対処が型化されたもの。
「取り合えず、この受けをやっておけば、被害は最低限に抑えられる。」
そうした性格があるのでしょう。
また、この受けのさらに優れた点は、反撃への転じやすさです。
ナイハンチにあるように、内受けの手は即座に裏拳顔面打ちに転じることが出来ます。いや、内受けそのものを裏拳顔面打ちに転じることも可能です。
<ナイハンチの内受け下段払い、転じて裏拳顔面打ち>
http://www.youtube.com/watch?v=EEniiQqw0nM
左手の内受け、転じて裏拳顔面打ち。
<本部流のナイファンチの用法>
「・・・返し技としては実際的には他手(控え手)の突きよりも、下払い手の裏打ち返し(顔面)の方が効果的である」
(「本部拳法のナイファンチ形の解明」(中田瑞彦、1978年))
つまり、内受け転じて裏拳、下段払い転じて裏拳、両方の用法が可能な訳ですね。
前者は型の中で明示的に示されていますが、後者も、型の中で内受け下段払いが二回繰り返されることによってほぼ明示されているようなものです。
それに内受け転じて、は正拳突きにもなり得ます。内受けで脇を絞った状態は戻すことで即座に正拳打ちになります。これは、摩文仁賢和が紹介している用法です。
<摩文仁賢和の内受け下段払いの解釈>
(「攻防拳法空手道入門」(1938年)より)
下段払いも受けのみの役割とは限らず、少し変則的な腹部への正拳突きとして繰り出すことも可能。
まさに変幻自在。
現状であまり掘り下げられていないのが残念です。
もちろん、型の分解として、約束稽古としては幾多の流派には受け継がれているのでしょうけれど、真剣勝負の攻防で研ぎ澄まされる機会は失われているように思います。
これはやはり試合ルールの影響が大きいのでしょう。
間合い戦が主となりインファイトが少ない全空連ルールや、顔面への手技攻撃が禁じられたフルコン空手ルール、さらにはグローブの存在によりコンパクトな裏拳の威力や腕刀での受けの意義が失われたキックルールでは、価値が大幅に減じてしまいますからね。
しかし逆に言えば、ここにはまだ深く掘り下げられていない空手の鉱脈が埋まっているとも言えます。
こうした技法にもっと光を当てるべき時期に、そろそろ来ているような気がします。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この文章を書いていたら、内受け下段払いはアウトサイドに入り身しても使えるぞ、と思い当たりました。
本当に面白い技ですね。
結び立ちになって片手は内受け(横受け)、もう一方は下段払い(払い受け)を同時に繰り出すあの技法は、昔は「こんなに使えない技はない」と思い込んでいましたが、最近になって本部朝基や摩文仁賢和の著作を読むようになり、認識が変わってきました。
あれは極めて実践的な技法なんですね。
<平安三段の内受け下段払い>
http://www.youtube.com/watch?v=N_ulfdFXmck
手を逆にして二度目の内受け下段払い。
(右手:下段払い、左手:内受け)
常に相手の攻撃をアウトサイドに入り身して捌けき反撃できるなら理想的ですが、現実にはなかなかそうもいきません。往々にして、インサイド、つまり相手が左右の手足を使って次々に攻撃を繰り出せるポジションに、身を置かざるを得ない局面が発生します。そうした局面で相手の攻撃を見切ることは至難。とっさに、内受け下段払いを行うという対応は、顔面や腹部、金的への攻撃を防ぐ最も確率の高い方法なのでしょう。
しかも型の中にある内受け下段払いは大抵二回。
これもインファイトとなると素人でも連打を繰り出す現実への対処が型化されたもの。
「取り合えず、この受けをやっておけば、被害は最低限に抑えられる。」
そうした性格があるのでしょう。
また、この受けのさらに優れた点は、反撃への転じやすさです。
ナイハンチにあるように、内受けの手は即座に裏拳顔面打ちに転じることが出来ます。いや、内受けそのものを裏拳顔面打ちに転じることも可能です。
<ナイハンチの内受け下段払い、転じて裏拳顔面打ち>
http://www.youtube.com/watch?v=EEniiQqw0nM
左手の内受け、転じて裏拳顔面打ち。
<本部流のナイファンチの用法>
「・・・返し技としては実際的には他手(控え手)の突きよりも、下払い手の裏打ち返し(顔面)の方が効果的である」
(「本部拳法のナイファンチ形の解明」(中田瑞彦、1978年))
つまり、内受け転じて裏拳、下段払い転じて裏拳、両方の用法が可能な訳ですね。
前者は型の中で明示的に示されていますが、後者も、型の中で内受け下段払いが二回繰り返されることによってほぼ明示されているようなものです。
それに内受け転じて、は正拳突きにもなり得ます。内受けで脇を絞った状態は戻すことで即座に正拳打ちになります。これは、摩文仁賢和が紹介している用法です。
<摩文仁賢和の内受け下段払いの解釈>
(「攻防拳法空手道入門」(1938年)より)
下段払いも受けのみの役割とは限らず、少し変則的な腹部への正拳突きとして繰り出すことも可能。
まさに変幻自在。
現状であまり掘り下げられていないのが残念です。
もちろん、型の分解として、約束稽古としては幾多の流派には受け継がれているのでしょうけれど、真剣勝負の攻防で研ぎ澄まされる機会は失われているように思います。
これはやはり試合ルールの影響が大きいのでしょう。
間合い戦が主となりインファイトが少ない全空連ルールや、顔面への手技攻撃が禁じられたフルコン空手ルール、さらにはグローブの存在によりコンパクトな裏拳の威力や腕刀での受けの意義が失われたキックルールでは、価値が大幅に減じてしまいますからね。
しかし逆に言えば、ここにはまだ深く掘り下げられていない空手の鉱脈が埋まっているとも言えます。
こうした技法にもっと光を当てるべき時期に、そろそろ来ているような気がします。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この文章を書いていたら、内受け下段払いはアウトサイドに入り身しても使えるぞ、と思い当たりました。
本当に面白い技ですね。