3月9日付日経朝刊コラム『フットボールの熱源』より | Field of Dreams

3月9日付日経朝刊コラム『フットボールの熱源』より

【鹿島のホームでよかった】

鹿島スタジアム駅からカシマスタジアムに向かう屋根付き通路の建設が進んでいる。幅15㍍、長さ72㍍の通路は「マルシェ(市場)」として使い、地元の農産物や海産物などを販売する。年間100日の営業を目指して各種イベントにも活用し、スタジアム周辺ににぎわいをつくる計画だ。

 屋根には太陽光発電パネルを設置し、スタジアムでの使用電力に充てる。約1億円の建設費は国のグリーンニューディール基金から補助を受ける。面白いのは、あえて結晶型、薄膜型、非シリコン型という3種のパネルを付ける点だろう。パネルはタイプによって特性が違い、晴れた日に力を発揮するものもあれば、曇っても安定して電力を生むものもある。

 3種のパネルによる発電量は日々、公開する。鹿島の鈴木秀樹事業部長は「1年後に総発電量を比べれば、この地域ではどのタイプのパネルが効果的なのかがわかる。こういうことをしていけば、住民に環境問題に関心を持ってもらえるかもしれない」という。
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マルシェでの売り上げの一部と寄付金を建設費に回して「通路=マルシェ」を延ばしていき、スタジアムを一周させるという夢のような構想もある。こうやってスタジアムに付加価値を加えていけば、近々予定しているネーミングライツ(命名権)の販売時に、権利を高く売れると見込む。

 ただし、この事業は単なるビジネスとして展開しているわけではない。源には地域開発という思想がある。鈴木部長は「目指しているのは、この地域の価値を高めること。それが真の地域開発だと思う。住民に『ここに住んで良かった』『アントラーズがあって良かった』と思ってもらえるようにするのが我々の仕事」と話す。あの通路をくぐると、鹿島というクラブの哲学を確認できる。(吉田誠一)

 画像は私が6日の開幕戦に撮影したものです。

元来の遅筆の為、この稿を書き上げる前の11日に、東北の太平洋沿岸で国内の観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震があり、宮城県で震度7の非常に激しい揺れを観測したほか、太平洋沿岸の各地で大津波が観測されました。地震と津波によって岩手県や宮城県、福島県の沿岸部は壊滅的な被害を受け、茨城県もほぼ全域で被災しました。カシマスタジアムの被害も大きく、Jリーグは3月中の試合をすべて中止しました。カシマスタジアムの修復には3か月以上かかるとか、今年いっぱいホームゲーム開催は無理ではないか、といった観測が流れています。

 上記スタジアムマルシェ構想も実現先延ばしになるかもしれませんが、アントラーズというクラブが成そうとしていた事業を、ここに記録しておきます。