「どこにいても、満たされて生きている人なんて、実はそんなに多くはいない。」漠廣木監督の言葉は心にしみる。映画「彼女の人生は間違いじゃない」は福島の今の現実を、被災者の方たちの現実を描写しながら、現代社会を生きる人々の人生を、寄り添うように描いた秀作である。人は、生まれた状況を変える事はできない。ただ、現実を受け入れて、前に進んでいくしかない。おかれた状況は人それぞれ、思うようにいかない。でも、人生を肯定していくためには、自分として受けいれられない事であっても選択しなければならない事もあるのだ。主人公のみゆきは、市役所勤めをしながら、父と仮設住宅で暮らす女性。父は妻を失った喪失感から抜け出せず、毎日パチンコ通い。生活のため、しかたなく彼女はデリヘル嬢として東京に出稼ぎに出る。

市役所の同僚の新田もやりきれない気持ちを抱きながらも、自分がやるべき仕事を日々の生活の中で見つけ出し奔走する。

その他登場人物のそれぞれの生き方をカメラは追いかける。震災はまだ、終わっていない。そんな事を感じながら、人の人生とはなんなのかを感じさせる映画であった。(★★★★)