認知症サスペンスとでも言えばよいのだろうか。眠ると記憶がなくなるという怖さと孤独。彼が生きる生き甲斐は与えられた復讐心。
物語は認知症のユダヤ人の老人が妻の死をきっかけに、家族を殺したアウシュビッツの責任者に復讐をするという話である。なんとなく、結末が想像できてしまったが、ラストは秀逸、いままでのストーリーは全てこのラストのために組み立てられているといっても過言ではない。

編集がすばらしく、特にディテールカットが効いていて、とても分かりやすかった。記憶がなくなる映画といえば、メメントを思い出すが、どちらも、手紙やメモが頼みの綱。これが書き換えられたものだとしても信じるほかはないのである。「手紙は憶えている」。楽しくみさせていただきました。(★★★★)