小津安二郎監督作品。
『東京物語』
「親と子の成長を通して日本の家族制度がどう崩壊するのかを描いてみた」と
小津安二郎監督は語った。
年老いた夫婦が子供たちを訪ねて、住んでいる尾道から東京に出てくる。
子供たちはそれぞれに家庭を持ち、毎日忙しく暮らしているが、
次男だけは戦死しており、妻は未亡人としてひとりで暮らしている。
小津監督は老夫婦のほのぼのとした会話や旅を通して、
家族の繋がりとその喪失というものを、丁寧に叙情的に冷徹に描いている。
笠智衆演じる72歳の周吉と東山千栄子演じる68歳のとみ。
二人の自然な演技が素晴らしく、台詞回しも完璧。
どのセリフ一つ増えても減ってもこの完全なドラマは壊れてしまう。
お互いいたわりあい支え合う。
こんな夫婦は、今の時代にはもう幻想なのかもしれない。
もうひとり注目させるのが、長女しげを演じる杉村春子。
「お義姉さん、喪服どうする?」
このセリフは、日本映画史に残る名台詞だと思います。
心にしまいこんだ苦悩を周吉ち打ち明ける次男の嫁で未亡人の紀子。
演じる原節子の思いつめた表情。
その告白に笑を返す周吉。
涙が出ました。
二人がラストシーンで佇む尾道の繊細な風景は、この物語の無常観を完結させる見事な場面です。
僕はこの作品を邦画MY BEST10 に入れていません。
というのは、まだこの作品を語ったり、正当に評価したりするのには若すぎると思ったから。
今思うに、この作品は評価や順位を超越した位置に存在する奇跡的な傑作だと思います。
MY BEST10に入れることは、これからもないでしょう。
でも、人から「一番日本映画らしい作品は」と問われたら、
迷わず「東京物語」と答えるでしょう。
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