最近、
各種ニュースで、よく「freee」という会計ソフトが取り上げられているので、
使ってみました。
その結果なのですが、
最初に書いてしまうと、、、、
「このソフト、こんな宣伝の仕方して大丈夫なの?」
ということ。
言っていること(私が持ったイメージ)と、
実態が全然あっていなくて、
後日、
ユーザの期待をすごく裏切りそうな気がしてなりません。
少なくとも、私は、
すごーく、イヤな気分になっています。
たぶん、うちのお客さんや、相談に来られた方には、
このソフトは勧めません。
ということで、以下、私が思ったことを書いていきます。
1.全然「フリー」じゃない
名前が「freee」だし、
あのGoogleの元社員が作ったソフトだし、
たぶん、ある一定の機能制限は、はめられるにしても、
超小規模事業者なら「無料」で使えるのか、、、と期待したのですが。
無料なのは、3ヶ月間だけ。
それ以降は、有料なのだそうです。
これは、単なる「体験版」であって、
全然、「フリー」ではないですね。
真面目に使おうとしたら、
お金を払わざるを得ない、という点で、
dropboxとかとは、全然違うので、その点はお気をつけください。
2.本当に、経理/簿記の知識はいらないの?
ホームページでは、
「経理/簿記の知識はいりません。
画面に従って操作すれば青色申告や会社法に
対応した決算書までカンタンに作成できます。」
と言ってます。
まあ、これも、確かに、半分は当たっていて。
画面の指示通りに操作すれば、
たぶん、決算書は出力できるのでしょう。
青色申告書も出力できるのでしょう。
でも。
それが、正しいかどうかは別問題です。
個人的には、
経理の知識のない人相手にしては、
支援機能が「貧弱だなー」という印象です。
まあ、無いよりマシなのかもしれませんが。
中途半端にあると、かえって混乱の原因となるときもあります。
いろいろ、思うところはあるのですが、
特に気になったことを、以下に一つだけ書いておきます。
3.全てが全自動で、申告書に反映されるわけではない
なのに、申告書を出力できるようにしちゃって大丈夫?
私が、一番危険だな、と思ったのが、
これから書く話なのですが。
freeeのQ&Aページにこんな話
が出ています。
要点だけまとめると、
質問:「個人事業主なのですが」
「売上が源泉徴収されて入金された場合、どう処理すればいいですか?」
回答:「源泉徴収された金額は《事業主貸勘定》で処理してください。」
質問:「そう処理すると、自動作成される申告書は正しく処理されるのですか?」
回答:「(・・・回答なし)」
こんな質疑がなされています。
でも、
この質問された方は、非常にするどくて。
自動で作成された申告書は、
正しく作成されていません。
システム的に考えれば当たり前です。
申告書には、
源泉徴収された金額を記載する欄がありますので、
源泉徴収された金額がいくらか、集計しておく必要があります。
でも、
源泉徴収された金額を、
単純に事業主貸勘定(=事業には関係ない支出を処理する科目)
で処理してしまったら、
源泉徴収された金額がいくらか、
システム的に掴めません。
当然、自動処理できるわけがありません。
ですから、
ここを自動処理したいのであれば、
源泉徴収された金額を入れる専用の科目を作らないといけないのです。
あるいは、
自動処理できないならできないで、
そのことを利用者に伝えてあげないといけないです。
中途半端な対応していないのに、
(あたかも、正しい帳票ができた、という体裁で)
最終帳票を自動で出力できてしまうのは、
非常に危険だと思います。
▼ということで、いろいろ書いてきましたが。
こういうソフトがあること自体は、悪いとは思いません。
使うべき人がきちんと使えば、便利なのだろう、とも思います。
ただ、
少なくとも、
1.
「freee」という名前からイメージさせるような、
いわゆる「フリーミアム」なソフトではない
2.
「経理/簿記の知識がなくても、申告書や決算書が簡単に作成できる」
という宣伝文句は、(論理的には)間違えてませんが、
正しい申告書・決算書ができるかどうかの保証はありません。
特に、
「売上が源泉徴収されるような業種のフリーランスの方」
は、経理/簿記の知識なしに、
この会社の言うことを鵜呑みにして、
適当に申告書を作ると、実害が出ますので、非常に危険だと思います。
※これは、どんな会計ソフトを使っても一緒の話ですが。
少なくとも、freeeを使ったから簡単になる、という話ではありません。
逆に、
従業員もいない。売上から源泉徴収もされない。
決算処理もほとんど不要。
入出金だけ集計すれば申告書ができる。
というような人であれば、
このソフトは便利かもしれません。
これならば、
確かに、経理/簿記の知識はなくても、
それなりの申告書は作れると思います。
※ちなみに、これも、どんな会計ソフトを使っても一緒です。
▼ということで、まとめです。
残念ながら、このソフトは、
経理の知識がない人でも、正しい申告書・決算書を作れる、
というような魔法のソフトではありません。
クラウド型のサービス、
というところは目新しいかもしれませんが、
根本的には、普通の会計ソフトと何ら変わりません。
なので、
仮にfreeeを使うとしても、
申告を自力でやるのであれば、
簿記、経理の勉強は、必要最小限は必要
という当たり前の結論になるのでした。