節税保険の実質返戻率のワナ | 起業・創業支援-東京都の公認会計士・税理士@渋谷区・新宿区

起業・創業支援-東京都の公認会計士・税理士@渋谷区・新宿区

創業直前~創業5年くらい経理、税金とか全然わからない「あなた」のためのブログです

さて、今回は、節税保険のパンフレットによく出てくる「実質返戻率(じっしつへんれいりつ)」という言葉について考えてみます。


節税保険のパンフレットに書かれている実質返戻率を見ると、100%を超える数字が並んでいることが多いと思います。



さぞかし儲かりそうに見える(笑)、、、のですが


ここにはワナが隠れています


まず、最初に。

そもそも、実質返戻率を計算するにあたっての前提がおかしくないか?という話です。


実質返戻率の計算前提を単純化すると、次のような計算をしていることが多いです。

  • 保険料100を負担すると、税率40%だから税金は40安くなる。だから、それを差し引いて実質保険料負担は100-40=60

  • それで、実際に返戻金を受けとるときの返戻金の受取額が80だとすると、80÷60=133%

ざっくり、こんな計算だろうと思います。


おかしいところ、わかるでしょうか?



おかしいところ その1:税率40%としているところ


中小企業の場合、年間利益が800万円を超えるまでは、税率25%~27%程度です。


そこを敢えて税率40%で計算してしまっている。

そうすると、実態よりも数字がよく見えることになります。


例えば、税率25%と仮定して、上と同じ計算をすると、

  • 保険料100を負担すると、税率25%だから税金は25安くなる。だから、それを差し引いて実質保険料負担は100-25=75

  • それで、実際に返戻金を受けとるときの返戻金の受取額が80だとすると80÷75=107%

ということになります。


税率を変えただけで、133%→107%に数値が大きく下がりました

まあ、まだ、100%超えているからいいか、、と思うかもしれませんが・・。



おかしいところ その2:税引後と税引前の数値を比較している


最後に出てくる「80÷75=107%」の部分なのですが、

なぜ、

保険料払うときは法人税控除「」の金額(=75)を使って

保険料を受けとるとき法人税控除「」の金額(=80)を使うのでしょうね?


直感的におかしいですよね?


普通は、

法人税控除「前」なら法人税控除「前」同士

法人税控除「後」なら法人税控除「後」同士

の比較をするものです。


例えば、法人税控除「前」同士で、返戻率を比較すると、返戻率は、

100払って80しか帰ってこないのですから、80÷100=80%となります。


100%割り込んでしまいました。

当たり前の結果なんですけどね。

これが、いわゆる「単純返戻率」というやつです。


節税保険としての評価をするのであれば、単純返戻率は指標の一つとして使えると思います。



ところで、こんな話をしていると、


「いやいや、退職金とか大規模修繕とぶつければ税金0になるんだから」

実質返戻率を使うのが当然だ!と言う人もいるでしょう。



ただ、もし、そういう人が周りにいたら・・・

その人には近寄らないほうがいいです(^^)


なぜなら、(詳しい計算過程は、書くのが大変なので省いてしまいますが)上のような状況「だけ」では、実質返戻率は実現できないからです。


 → なぜ、実質返戻率を使うのがダメなのか解説記事を書きました


ですから、上のような主張を堂々と言う人は、


・厳密に税金のこと考えたことがない人か


・あなたを騙そうとしている人か、


どちらかだと思います。

※反論あり!という方は、コメントなりメッセージなり頂けるとうれしいです

どちらにしても、私は、近寄りたいとは思わないタイプであることに変わりありません。



結局、


・計算前提の税率がおかしい(※毎年800万円の利益が出ていない会社の場合)


・そもそも実質返戻率を実現できる状況を意図的に作るのがなかなか難しい(※よく実質返戻率の根拠として言われている話がありますが、それでは根拠になっていないことが多い)


というのが、私の考える「実質返戻率」に隠れているワナです。




節税保険に入ろうか、と悩んでいる場合、

1.実質返戻率はあてにしてはいけません

2.実質返戻率を強調する営業マンには近づいてはいけません


以上、2点お気をつけください。