ゴールデンスランバー/伊坂 幸太郎


「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎  新潮社 1600円



さあ。何事もなかったようにこのブログを再開します。
しかも、題名も若干代わったりして。再び、よろしくお願いいたします。



《あらすじ》

首相の金田が仙台で、凱旋パレード中に暗殺された。

暗殺犯として、指名手配され、追われているのは、数年前に暴漢からアイドルを救ったことで有名になった宅配便ドライバーの青柳。青柳は学生時代の友達の森田に呼び出され、その場にいた。

森田は、なにか別の目的があったようだったのだが、青柳に「逃げろ!オズワルドにされるぞ!」と、叫ぶ。

一体、何が起こっているのか?どこから罠がしかけられ、誰が敵なのか?

混乱しながらも逃げる青柳と、青柳を信じる人たちの、奇跡のようなエンタテインメント小説。



さてさて。
伊坂幸太郎の集大成、究極のエンタメ作品「ゴールデンスランバー」。
ガチンコでぶつけると、文藝春秋作品が直木賞を取れないからと、直木賞は次回の選考対象になったとのうわさもあるほど。
私が、今、一番好きな作家、伊坂幸太郎に、これだけのプラス要素がつけば、と、発行されてすぐに購入したのに、気負いすぎて、うっかり読むのに時間がかかってしまったほど・・・


で、結論です。
期待以上の、最高傑作でした。
今年始まってすぐだけど、間違いなく本年度ベスト3に入る。っていうか、人生ベストにも入るかも。
伊坂作品に全作品共通しているのは、「だから、君はどうするんだ?」ということだと思う。
これだけ色々な情報が氾濫している中、何を信じ、何を選び取っていくかを、人はもっと自認し、そして、責任を負わなければならないということ。
世の中の流れがたとえ自分の信じることと逆流しているとしても、自分で選び取ったもので自分で考えなければならないということ。
その結果、犠牲になった兄を描いたのが、伊坂さんの「魔王」だった。(この作品も本当に最高だったけれど)
それに対して、この「ゴールデンスランバー」は、大きな流れの本流は変えれないかもしれないけれど、間違っていることに対して、自分のできる範囲内で抗うことはできる。その流れに小さな橋を作るように、自分をごまかさずに、小さくとも胸を張ることはできる。
そんな物語だったように思う。
青柳君を助けようとする、色々なひとの、色々な気持ちが胸をついて、自分の生活や幸せをギリギリの範囲で守ろうとしながらも、青柳君や自分自身を信じることは捨てない彼らに終盤は泣きっぱなしでした。


何かを選ぶときに、「楽なこと」を選ぶのか、「自分の信じること」を選ぶのか、「選ばざるをえないこと」を選ぶのか、という3つの選択肢があると思う。
この本を読みながら、どの選択をしても、その選択に対する責任を負っていることを忘れてはならんのだな~と。
メディアにだまされたと声を荒げるのは簡単だけれど、だまされた自分の責任も忘れてはならない。
すべてを自分の目で確認することは不可能。けれど、せめて、自分の言葉に置き換えることは必要かもしれない。
そして、起こったことに目を閉じて通り過ぎるのを待つのか、たとえ何もできなかったとしても、目を開けて何も出来なかった自分をきちんと見届けるのか、それもきちんと自分で決断しなくてはならない。
そんなことをぼんやり考えながら、私は、例え目の前の真実が思い描いたものでなかったとしても、目を閉じることだけはしたくないな、そう思いました。



抽象的なごたくばかり並べましたが、小説としては、色々な複線がラスト、一気に一本になる、ものすごいエンタテインメント小説です。
特に、ラストシーンは秀逸です。
どんな端役と思っても、登場人物をメモがきしながら読み進めてください。
おおお!この人が、こんな活躍を!的な感動を味わえます。伊坂さんは天才だよ・・・
ぜひ、映像化もしてほしいところですが、映画にすると2時間にはしょらなければならない。
でも、無駄なエピソードは一つもないので、ぜひ、NHKかWOWOWあたりで全4話ぐらいの、ものすごく上質なドラマとかいいかもなあ。





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