ROAD OB WAR


ロード・オブ・ウォー

監督・脚本・製作:アンドリュー・ニコル

出演:ニコラス・ケイジ イーサン・ホーク ジャレッド・レト イアン・ホルム


ストーリー

ウクライナで生まれたユーリーはニューヨークに移住後、家族の経営するレストランを手伝っていた。

ある日、街で銃撃戦を目撃したユーリーは弟ヴィタリーとともに武器承認への道を歩んでゆく。

ヴィタリーは精神的に追い詰められ麻薬に走ったが、商才を活かし頭角を現していくユーリー。

憧れの女性モデルのエヴァさえも金をつかい偶然を装い、妻として手に入れた。

そんな彼をインターポールのバレンタイン刑事が追っていた。


★★★★★★★☆☆☆



軽快でウェットなセリフ。ズームやスローをつかったコメディタッチの映像。しかし、見終わった後胸には思いしこりが残る。

不快という意味ではなくて、突きつけられた事実を脳内で処理するまで、感情の葛藤が・・・

現状に対する絶望があまりにも深くなる。

「かわいそう」という感情面ではなく、本当にこれだけ深く考えさせられる戦争映画を久しぶりに見た気がする。


ユーリーが武器商売に乗り込んだのは、功名心からだろう。

ただ、仕事が拡大していくうちに、自らの履歴書自身が嘘で塗り固められていく。その嘘の上で得た家族や生活の為、あまりに渡ってきた橋の危ない人脈の為、もう後には引けなくなっていったのだ。

自分の運んだ銃で誰かが殺されると分かっていながら、それを考えないようにすることで、仕事に没頭するユーリー。

対して、弟のヴィタリーはその事実に耐え切れず、ドラック付けになっていく。

もっともっと、と思う人間の業を否定するつもりはありません。

ただ、最後、ユーリーの手に残ったもの、ユーリーが生涯背負い続けなくてはならないものを考えると、疑問を通り越して、切なくなる。



戦争、というのは、経済事業なのだと改めて思った。

武器を買ったり売ったり。それは国ぐるみであり、軍の利益であり、軍人の稼ぎであり、武器商人がいる。

けれど、それで本当に闘う人たちは、思想だとか宗教だとかの大義名分を押し付けられ、実際の「経済事業の利益」にありつく事は、ほとんどない。

カラシ二コフを背負った少年兵。虐殺される難民。流れ弾に当たる少女。戦争の上荒れた国内でエイズにかかる人々…

シリアスな題材を扱いながらも、わざとエンタテイメント的にしているのが、何よりの皮肉だろう。

それは、邦題で「アメリカンビジネス」というナイスな題をつけながらも、結局土壇場で原題通りになるようなこの国に対する皮肉であり、

未だに理不尽な事で命が奪われる現状に対する皮肉であり、

何より、「世界の警察」と自称しながらも、この「事業」を一番操作しているであろう、あの国に対する皮肉の映画なのだ。


ジャレッドレトはいいね。ほんと、いいね

正義感と使命感を胸にユーリーを追うバレンタイン刑事。しかし、彼の正義もその皮肉によって、結局は踏みにじられる。

ラストのナレーション。なによりも米・英・仏・露・中が武器を量産、売買していること、そしてその5国が国連の常任理事国であるという事実。

きっと、この一文を知らせたいがために作った映画なのだろう。

一人でも多くの人に見てもらいたい映画である。

そして、戦争という自らの命をかける行為が、結局は誰かの「ビジネス」の一部なのだというしょーもなさを、だからこその平和の尊さを、重く残る胸のしこりとともに考えてほしいと思う。

これ以上、バカな偉い人や、勝手な武器商人を儲けさせるのは、本当にシャクだ。