今年の年賀状も、送ってくださった方にお返しするスタイルでいこうと思います。
要約すると何も準備ができていません。テヘッ☆


【フィクションの中のシューベルトはだいたい奇矯なキャラクターにさせられる率が高い】

皆さんは、今Eテレで放送中のアニメ「クラシカロイド」をご存知でしょうか

クラシカロイドの語源はおそらく「クラシック+アンドロイド」
クラシカロイドたちは、歴史に名を残す偉大な音楽家たちと同じ名前をもち、「ムジーク」という不可思議な現象を発動させることができます。

ムジークが発動すると、その発現者が作曲した曲を大胆アレンジした音楽が流れ、なんか巨大ロボが現れたり、ガシャドクロが現れたり、木がにょきにょき生えてやたらガタイのいいキューピッド(?)が矢を射ってきたり、大人が赤ちゃんになったりします。
ムジークは出そうと思って出しているのではなく、クラシカロイドの感情が大きく動いた時にほぼ無意識に発現するようです。

ここまでの説明が所々あやふやなのは、クラシカロイドたちについて作中でもほとんど語られていないからです。
現在、よくわからないまま話が進んでいます。
ちなみに監督は「銀魂」とか「おそ松さん」の監督さんです。


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ベートーヴェン先生
当初はギョーザー(餃子)作りにハマっていて、やたら餃子ばっか作ってました。

ベートーヴェン先生のムジークのひとつに「皇帝の美学」という曲があります
元ネタはベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 第5番」、通称「皇帝」です。
NACSファンの方には本公演「COMPOSER」のオープニングでみんなが登場する時に流れてる曲といえば馴染み深いかと思われます。


小沢征爾指揮、エッシェンバッハによるピアノ。
この動画、第1楽章途中で切れる……

さて、ベートーヴェン先生がこのムジークを発動すると、空から大量のペンギンが降ってきます。
そう、コウテイペンギンです。

まさかと思いましたね。
たしかに、皇帝なんだけれども。
このペンギンたちが大暴れするのだからさあ大変。

そのペンギンの中でもひときわ巨大な、2階建ての建物と同じくらいの高さがある皇帝オブ皇帝ペンギンがいます。
なんか見たことのある皇帝コート。

そうです、ナポレオン皇帝です。

まさかと思いましたね。
たしかに、たしかに皇帝なんだけれども。
ナポレオンさんのあの有名なコートを着た、めっちゃでかいペンギン。
まさかと思いましたね。
あのペンギン、公式でボナパルトという名前が付いてるらしいです。

アレッ?ベートーヴェン先生ってナポレオン嫌いだったんじゃなかった?とかいう話は気にしたら負けです、おそらく。

この皇帝が発動した時、ベートーヴェン先生が戦っていた相手は、なんとあのチャイコフスキー!

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チャイコフスキー、女の子です。

なぜか?わかりません。
そんなこと言ったらフランツ・リストも女体化しているので、深く考えてはいけません。
同じくクラシカロイドのバダジェフスカからは「チャイ子ちゃん」と呼ばれています。

この回を観ていて、私ふと思ったんですね

ベートーヴェン先生の皇帝がナポレオンなら、チャイ子ちゃんの「大序曲1812年」で打ち破れるのでは?と。

この「大序曲1812年」は、ナポレオンがロシアに攻め込み敗走した様子を曲にしたもの。
曲の途中に、大胆にもフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が引用されています。
最初は華々しかったラ・マルセイエーズが、ロシア軍の軍靴の音を連想させるような特徴的なフレーズに次第に押し負かされ、駆逐されていく様子がドラマチックに描写されています。


ドラティ指揮、ミネアポリス交響楽団演奏
ラストの畳み掛けるようなフレーズかっこいい!(12:35くらいから)

現在でも強い寒気を表現する際に使われる「冬将軍」という言葉はこの時に生まれたものらしい。
ナポレオンはロシアに負けたのではない。冬将軍に負けたのだ!というやつですね。
詳しくは最寄りの西洋史詳しい人に訊いてください(丸投げ)

この曲の特徴としては、曲の中で大砲の音を使っていることが挙げられます。
現代ではなかなか大砲を鳴らすのも難しいので、大太鼓で代用されることが多いとか。
上記のドラティ先生指揮によるものは、本物の大砲を使って録音されています。
ナポレオンが1812年の戦いで使用したものと同型のフランスの大砲を入手すべく、アメリカ・ウェストポイントの合衆国陸軍アカデミー博物館に協力してもらったとか。すごいこだわりよう。

最後の釣鐘の大合奏は、当初の予定ではクレムリン中の教会の鐘が一斉に鳴らされる予定だったそうで、実現していたら一大スペクタクルコンサートだったろうなあ!とワクワクします。

そんなこんなで、チャイ子ちゃんがベートーヴェン先生の皇帝に勝つには1812しかない!!とドヤ顔をかました森田でしたが、ふと気づいてしまったんですね

あのナポレオン、ペンギンだから寒さに強いじゃん……

なんて抜け目のなさだベートーヴェン先生……さすが楽聖……
まさかこんなところでペンギン設定が活かされるとは。

ごめんねチャイ子ちゃん、あなたを応援したかったのだけど……


ベートーヴェン先生が冒頭、理想のギョーザー(餃子)を求めて試行錯誤し、失敗を繰り返していたエピソードからして、先生の辿り着く先は交響曲第9番「合唱付き」なのでしょうね

理想の「歓喜」を求めてあらゆる旋律を試していく第1楽章から第3楽章
各楽章で出てきた「歓喜の旋律候補」を、次々と否定していく第4楽章
「おお友よ、このような音ではなく、もっと快いそして喜びに満ちた歌をうたいだそうではないか」

バスの「Freude!(歓喜よ!)」の呼びかけに合唱が応える
そして現れるあの「歓喜の歌」の旋律…
なんて美しい曲なんだ……(フルトヴェングラー指揮の演奏を聴きながら)

あの歓喜の歌の有名な旋律は、モーツァルトの「ミゼリコルディアス・ドミニ(主の御憐れみを)」にも出てくることが知られていますね

(01:00あたり)

ここからは森田が何度も書いてる妄想なんですけど、
この旋律は古代ギリシャのピタゴラスが唱えたという「世界を調律する音楽」なのではないか。
「世界を調律する音楽(ムジカ・ムンダーナ)」は、人間の耳には聴こえない。
天体の運行とか、季節の変化とか、そういうものの調律をする秩序を意味する最上級の音楽。

モーツァルトは天才なので、この音が聴こえた。
それを譜面に起こして、「ムジカ・インストゥルメンターリス(人間の耳に聞こえる、最下位の音楽)」にしてしまった。
ベートーヴェンはそれを発展させて、「歓喜の歌」として完成させた。
だからこそこの曲はここまで人の心に響くのではないか。
何回も同じこと言ってるけどね!

クラシカロイドでもベートーヴェンとモーツァルトがよく一緒にいるのはこういうことなのかしらと深読みしてます。深読み大好き。


話はそれるうえに、これも前から言ってる話なんだけど、この「世界を調律する音楽」は宮沢賢治にも聴こえていたんじゃないかと思う。
彼の著作『シグナルとシグナレス』の中の一文
『波がやんだせいでしょうかしら。何か音がしていますわ。』
『どんな音。』
『そら、夢の水車の軋りのような音。』
『ああそうだ。あの音だ。ピタゴラス派の天球運行の諧音です。』

このピタゴラスの話は、5世紀イタリアの哲学者ボエティウスが記した『音楽綱要』の中で紹介され、ヨーロッパに広まったとのこと
どの程度の階層の人が知っていたのか(専門的な音楽知識を持った人のみが知っていたのか、地方の学校の先生レベルで広まっていたのかなど)は調べていないので分からないのですが、宮沢賢治はクラシックに造詣が深かったそうなので、音楽も勉強していたんですかね…
あんまり近代の作家は詳しくなくて……

同じ話を何度もするのは老化現象ですね。
でも話したいから話すの。

「夢の水車」を可視化すると、太陽系儀みたいな感じなのかな
アンティキティラの歯車はもしかしたら天体を支えるどこかの部品がこぼれ落ちた物かもしれない……とか考えたら楽しそう

ニュアンスを可視化すると五十嵐大介さんの漫画『魔女』第2集の「ペトラ・ゲニタリクス」最後に出てくる天体を戴いた有翼の女性たちみたいな感じ。



こんだけ話しといて、クラシカロイドの森田の推しはショパンです。
人とコミュニケーションをとるのが大の苦手、いつも部屋に引きこもっています。
外出の際はダンボール箱被っててめっちゃかわいい

彼が今まで発動したムジークは比較的静かな曲ばかりだけど、
そのうち「革命のエチュード」からの「英雄ポロネーズ」してくれると信じてるので、今後の伸びしろが無限大です。

友人のリストからは「チョッちゃん」と呼ばれています。
ショパンのつづりがチョピンだからだね。

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途中で塗るの力つきたチョッちゃん
胸元のプリーツがかわいい
「雨だれ」「別れの曲」も好きだよ






作品に出てくるムジークがちょっとずつ聴けるよ!
ちなみに私はこのアルバムすでに買いました
クラシックに日本語歌詞を付けるのに多少抵抗があったのですけど、聴きこむほどにクセになってきました。今は通勤の車内でヘビロテしてます

アレンジって言うから、有名な旋律だけ残してあとはかなり変えられちゃってるのかな?って思ってじっくり聴いてたら、なんとビックリ
原曲のフレーズをそのまま使って、ポップにロックに再構成されているんです!!
各クラシカロイドには専属のアレンジャーがついていて、それぞれの特色を活かしたテイストが楽しめますよ!!
アレンジャーが大物ぞろいなのがさすがEテレ!

なんか作品の回し者みたいになってしまいましたね。
いや、音楽好きなんだよ……知識はないけど……


あとジョジョの声優さんが結構出てる…
ベートーヴェンは若ジョセフ、モーツァルトは康一くん、リストは由花子さん

あとチャイ子ちゃんの手下?ペット?ねずみのキング(「くるみ割り人形」に出てくる悪役)
すごい小物だったけど、声がDIO様……
声聞いただけじゃ気づかなかった。エンドロール見てビックリした。
あ、あんた悪の帝王でしょ!?!?!?ペンギンにビンタされて錐揉みに吹っ飛んだよ!?!?!
ってアワアワしてた

ベートーヴェンのセリフ
「お前が王なら、俺は王を統べる“皇帝”だッ!!!」
がシビれましたね。しびあこ。


皇帝って諸侯の上に立つ存在ってことなんですか?(世界史無知)

「どのあたりがどういうふうにおもしろいの?」って訊かれたら
「………ピンク色の汁……」と答えるアニメ、クラシカロイド
ぜひ観てね!(回し者)