夏の午後 | haibaraのつぶやきブログ

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今年も、弟と日程を合わせて帰省する。

「あなたたちが帰ってくる日、あのお店に行こうと思うの」
電話の向こうの母の声を遠くに聞き、
私は肌の汗を感じながら、
ひんやりとした畳の温度を思い出していた。

昼間も暗い部屋、
川から流れてくる水の音。
障子を開けると映るトンボの羽の影。
部屋に流れ込む風。

寝転がりながら、
宿題をしなきゃ、宿題をしなきゃと焦っていた夏休み。
出席カードを首から下げて歩く通学路。
あの頃、夏の暑さをうっとうしく思ったことなどなかった。
流れる汗を感じることがないほど、
高い空に湧く入道雲に見とれてた。

そのお店に行くなら、あのお肉が食べたい、とても元気が出るから。
そんなわがままを母に言ってみる。
あれから30年以上経ち、
私は母に甘えられるようになった。
そして母も、子どもの甘えを叶えられるようになったのだった。



夏陰】 スガシカオ