「LINE上場 ~日本から世界的ネット企業が生まれない理由」 | オプトHLD CEO 鉢嶺登 オフィシャルブログ

「LINE上場 ~日本から世界的ネット企業が生まれない理由」

LINEが日米同時上場する。時価総額は6000億円でユーザー数は2億人を超える。
大きな数字に見えるが、米国や中国の同様企業に比べると大きく見劣りする。米国facebook傘下のWhatsAppは9億人、中国テンセント傘下のWeChatは6.5億人と大きな差がある。

〈世界の主要メッセンジャーモバイルアプリのアクティブユーザー数ランキング〉
※2016年1月時点、Statista調べ。()内はアクティブユーザー数
1位 WhatsApp(9億人)
2位 QQ(8億6000万人)
3位 Facebook Messenger(8億人)
4位 WeChat(6億5000万人)
5位 Skype(3億人)
6位 Viber(2億4900万人)
7位 LINE(2億1200万人)
8位 BBM(BlackBerry Messenger)(1億人)
9位 Kakao Talk(4800万人)
<http://www.statista.com/statistics/258749/most-popular-global-mobile-messenger-apps/>

最も巨大なネットインフラビジネスは残念ながら日本からは生まれないだろう(Lineはそもそも韓国企業だから、正確には日本市場からは生まれないという意味)。米国と中国には敵わない。今後はインドにも敵わなくなるだろう。それはなぜか?

如実な事例で説明しよう。
オプトでは以前ツイッターの有力投稿者に広告を付けるビジネスを行った事がある。日本で最もツイッターのフォロワー数が多いのは芸人の有吉弘行で約500万人。
<http://meyou.jp/ranking/follower_allcat>

一方で米国や中国では1000万人を軽く超える。ちなみに世界一のフォロワー数はケイティペリーの7700万人と有吉弘行の10倍以上だ。同じビジネスでもユーザー数の違いにより売上が10対1なってしまい、我々は採算が取れず撤退した。
<http://matome.naver.jp/odai/2139806539969747601>

つまり、インターネットのインフラビジネスは「語学圏ユーザー数」が極めて重要となるのである。これの意味する事は、実はビジネス上、想像を絶する程大きい。同じビジネスを立ち上げても日本語圏ユーザー1億人に対し、英語圏ユーザー10億人、中国語圏ユーザー10億人となれば、1対10対10。売上も、利益も1対10となれば、当然、時価総額も1対10。そして資金調達額も、投資対リターンも、設備投資額も1対10となる。従って、米国や中国ネット企業の時価総額は極めて大きく、ベンチャーキャピタルも多い。その結果、起業家も集積する。同じサービスへの設備投資が1対10ではサービスレベルでは戦いにならない。

かつての日本は携帯電話OSはドコモのiモード、検索はヤフー、SNSはミクシー、動画はニコニコ、ECは楽天だった。しかし、携帯OSはアップルとグーグル、検索はグーグル、SNSはフェイスブック、動画はグーグル(ユーチューブ)、ECは辛うじて楽天が踏ん張っているが奇跡に近い。

その結果、ネット企業の時価総額は米国4強がいずれも10兆円を超えているのに対し、日本では1兆円超えはソフトバンク、ヤフー、楽天のみだ。いずれも1/10未満。中国のように鎖国政策を取れる国は良いが(中国ビッグ3は米国4強に携帯OS以外侵食されるのを防いでいる)日本では不可能。そうなると世界を席巻するようなネットインフラ事業は、全て米国に抑えられてしまうだろう。日本は自国内のニッチ市場内(ニッチと言っても日本の基幹産業に成る程大きいが)で勝負するか、日本で稼いだ金を使って海外で買収に出る(ソフトバンクのアリババ等や楽天のViber等)しか手が無くなる。




<http://www.kpcb.com/internet-trends>


しかも、深刻なのはネットがあらゆる産業に浸食していくことだ。例えば、以前ブログで書いた自動運転。米国のテスラやグーグルが先行しているが、デジタルでの優位性を活用し日本で最大規模の産業である自動車産業が浸食されていく。さて、このデジタル時代に日本はどう世界で競争力を保つのか?

国としては米国4強から徴税する仕組みを作ることが急務だろう。また我々企業は競争戦略をよくよく考え手を打っていかねばならない。

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<http://www.opt.ne.jp/holding/ceo/>