6月11日、社会保障審議会介護給付費分科会 (田中滋・分科会長 以下、分科会)の第102回 が開かれた。

専門紙では「報酬改定の論点 介護給付費分科会 サ付き住 行政指導の強化も必要 認知症GH 重度化が課題 」(2014.06.12シルバー新報)、前回の第101回については「介護給付費分科会 定期巡回 看護との連携焦点に 」(2014.06.12シルバー産業新聞)などの報道がある。第101回については、「利用は少なくても“普及”が必要な訪問看護サービス 」を参考にしてもらいたい。

なお、介護保険法改正法案(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案) は16日現在、参議院厚生労働委員会(石井みどり・委員長)で参考人質疑が行なわれているが、今週中にも可決される見通しとされている。

■「認知症施策」の現状
分科会では、厚生労働省老健局から「認知症への対応について 」(資料1、39ページ)と「高齢者向け住まいについて 」(資料2、67ページ)の説明が行なわれ、委員から自由意見が出された。

「認知症への対応について」では、勝又浜子・認知症・虐待防止対策推進室長から「認知症高齢者」と「認知症施策」の状況、認知症の人に係る介護保険サービスの現状について報告が行なわれた。
 認知症の人については、「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上」が2013年に305万人、2015年に345万人、2025年に470万人と推計されている。
介護保険サービスを利用しているのは約280万人(2010年)で、「日常生活自立度Ⅰ」あるいは介護認定を受けていないのが約160万人、「МCI(正常と認知症の中間の人)」が約380万人と報告されている。

■認知症サービスの現状
厚生労働省が分科会で、認知症の人へのサービスとして取りあげたのは、認知症グループホーム、認知症デイサービスのふたつだ。
 2010年の時点で、介護保険サービスを利用している認知症の人は約280万人と報告されているが、2010年12月段階で認知症グループホームの利用者は15.2万人、認知症デイサービスは0.2万人で、全体の5.5%だ。

■認知症グループホームの特徴
認知症グループホームは、要支援が900人、要介護が17.8万人で、合計18万人が利用している。介護報酬の請求事業所は、介護予防認知症グループホームが748事業所、認知症グループホームが1万2,236事業所になる(厚生労働省大臣官房統計情報部「介護給付費実態調査2014年3月審査分 」)。
分科会資料では、利用者の平均要介護度2.8(要介護2が25.2%、要介護3が27.0%)で、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲaが29.1%、Ⅲbが 22.6%になり、重度化が進んでいることが報告された。また、利用する前の暮らし方は、ひとり暮らし(44.8%)、自宅(61.1%)が多かった。
事業所は営利法人が49.1%と約半数で、2ユニットが約6割、1ユニットが約4割を占め、介護報酬の加算の取得状況では、「介護職員処遇改善加算」(76.2%)と「医療連携体制加算」(72.1%)が多く算定されていると報告された。

認知症グループホームの「論点」
 勝又室長からは、認知症グループホームの介護報酬の見直しの論点として、下記が示された。
1.利用者の役割を生かすケアを推進するための方策
2.医療ニーズ(酸素療法、カテーテル、疼痛ケア)のある利用者に対応する医療連携
3.現行の人員配置基準を踏まえた夜間・深夜時間帯の人員配置加算
4.重度化に対応した福祉用具貸与・福祉用具レンタルへの対応(現行は併給不可)
5.運営推進会議のあり方、外部評価のしくみ

■認知症デイサービスの特徴
認知症デイサービスは要支援が900人、要介護が5.8万人で、合計6.7万人が利用している。介護報酬の請求事業所は、介護予防認知症デイサービスが561事業所、認知症デイサービスが3,760事業所だ(厚生労働省大臣官房統計情報部「介護給付費実態調査2014年3月審査分 」)。
分科会資料では、利用者の平均要介護度は2.7(要介護2が22.3%、要介護3が27.0%)で、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲaが22.0%、Ⅲbが20.7%になり、2006年度の「制度創設以降、顕著な変化は見られない」とされた。
事業所は社会福祉法人が47.7%(厚生労働省大臣官房統計情報部「2012年介護サービス施設・事業所調査の概況 」)だが、単独型が約5割、併設型が約4割と報告された。

認知症デイサービスの「論点」
 勝又室長からは、認知症デイサービスの介護報酬の見直しの論点として、下記が示された。
 1.通所介護の機能に着目した事業内容の類型化による位置づけ
 2.「3人以下」とされている共用型デイサービスの定員基準

認知症に関わる加算サービスの「論点」
 また、「論点」の最後には「認知症に関連した介護報酬について」として、「これまで認知症に関連した加算が多く創設されてきたが、認知症要介護高齢者は 今後も増加する見込みであり、認知症への対応を進めるためには、これらの加算についてどのように考えるか」という提起もあった。
 分科会資料では、「認知症に関連する介護報酬について(介護サービスを利用する認知症高齢者の割合)」(資料1、34ページ目)のデータが示された(表参照)。

■「認知症への対応」の根拠となった資料
今回の認知症グループホームと認知症デイサービスの現状と「論点」については、下記の調査資料が用いられている。詳細は各報告書で確認してもらいたい。

[2012年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(2013年度調査)]
・2012年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)『認知症対応型共同生活介護のあり方に関する調査研究事業 』(株式会社富士通総研、藤井賢一郎・委員長)
・2012年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)『認知症の人に対する通所型サービスのあり方に関する調査研究報告書 』(社会福祉法人浴風会認知症介護研究・研修東京センター、本間昭・委員長)

[その他の調査]
・厚生労働科学研究費補助金(認知症対策総合研究事業)『「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」2011~2012年度総合研究報告書』 (筑波大学、朝田隆・研究代表)
・2010年度独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業「認知症グループホームにおける運営推進会議の実態調査・研究事業報告書 」(一般社団法人日本認知症グループホーム協会、荒田寛・委員長)

行方不明者の「早期発見」
なお、認知症の人の長期にわたる行方不明事件について、大阪市、群馬県館林市、埼玉県狭山市などのケースがマスコミでクローズアップされ、「」(6月15日毎日新聞行方不明者の照合システムや警察と自治体間の連携の弱さ )が指摘されている。

警察に行方不明者として届け出があった認知症の人は、2012年に9,607人、2013年には1万322人になり、9割以上は発見されているが、4月現在、258人が所在不明だ。田村憲久・厚生労働大臣は「来週あたりに各自治体に実態調査をお願いしていきたい」(田村大臣閣議後記者会見概要2014.06.06 )としている。

次回の第103回分科会は6月25日、「区分支給限度基準額」と「ケアマネジメント」がテーマに予定されている。(ケアマネジメントオンライン)