2012年度に発生した介護施設などの従事者らによる高齢者への虐待件数が、過去最多を更新したことが26日までの厚生労働省の調査で分かった。調査では、利用者の金品などを奪う「経済的虐待」が、居宅系サービスで多く発生していたことも明らかになった。また、家族ら養護者による高齢者の虐待件数は前回調査より1000件あまり減ったものの、1万5000件余りを記録した。


 厚労省が発表したのは、昨年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」。

 調査によると、介護保険施設などでの従事者による虐待について、市町村などが相談・通報を受け付けた件数は前年度比7.1%増の736件。このうち、虐待と判断されたのは155件(同2.6%増)で、いずれも過去最多を更新した。虐待の種類(複数回答)では、「身体的虐待」が56.7%で最も多く、以下は「心理的虐待」が43.7%、「介護等放棄」が12.2%、「性的虐待」が7.2%、「経済的虐待」が5.7%となった。

 高齢者を虐待した従事者を性別で見ると、男性は41.0%、女性は59.0%となった。ただ、介護従事者全体に占める男性の割合は21.4%に過ぎないことから厚労省では「特に男性の従事者に対する指導などの強化が必要」(認知症・虐待防止対策推進室の勝又浜子室長)としている。また、「身体的虐待」については、認知症の症状が重い人ほど被害者となりやすいことも分かった。

■施設などで多いのは「身体的虐待」
 
 虐待の種類と施設の種別の関係を調べた調査では、特養などの介護保険3施設やグループホーム、小規模多機能型居宅介護、有料老人ホームなどで発生した虐待の場合、「身体的虐待」が最も多く、次いで多かったのが「心理的虐待」だった一方、利用者の金品を奪うなどの「経済的虐待」は、ほとんど発生していなかった。ところが、訪問介護などの居宅系サービスでは、「心理的虐待」と並んで「経済的虐待」が最多となった。従事者が1人で利用者宅を訪れる場合が多い居宅系サービスで「経済的虐待」が多かった点について、勝又室長は、「深刻な結果。今後、具体的な対策を検討したい」としている。

■家族らによる虐待、最も多いのは「息子から」

 また、家族などの養護者による高齢者への虐待について、市町村などが相談・通報を受けた件数は前年度比7.0%減の2万3843件。このうち虐待と判断されたのは1万5202件(前年度比8.4%減)だった。虐待の内容(複数回答)では、「身体的虐待」が65.0%で最も多く、以下は「心理的虐待」(40.4%)、「経済的虐待」(23.5%)、「介護等放棄」(23.4%)、「性的虐待」(0.5%)となった。
 
 虐待を受けていた人から見た虐待者の続柄は、「息子」(41.6%)が最多で、以下は「夫」(18.3%)、「娘」(16.1%)、「息子の配偶者(嫁)」(5.9%)、「妻」(5.0%)となった。また、昨年度、家族らによる虐待で死亡した高齢者は27人で、その内訳は「養護者による殺人」、「介護等放棄(ネグレクト)による致死」(いずれも10人)、「ネグレクト以外の虐待による致死」(4人)などだった。介護施設などで起こった虐待による死者はいなかった。(CBニュース)