一般社団法人日本介護支援専門員協会は、10月30日、社会保障審議会介護保険部会に介護保険制度改正への意見書を提出した。(ケアマネジメントオンライン)

冒頭、介護保険制度開始以来、利用者に介護保険サービスやインフォ-マルサービスをつなぐ役割を果たすとともに、地域に必要な資源の不足を埋める役割も担ってきた介護支援専門員が適切な支援を実現するために、「公正中立なケアマネジメントを行うことのできる環境が整えられることを切に願っている」と意見書提出の理由を説明。

居宅介護支援事業者の指定権限の市町村委譲は時期尚早であり、最短でも第7 期介護保険事業計画開始時期とすること、地域ケア会議については、個別のケアプランチェックや給付抑制に主眼が置かれないよう、運営マニュアルや法の明確な位置づけを求めた。
介護予防給付の地域支援事業への移行については、現場や利用者の混乱が予測されることから、「予防給付の財源がそのまま移行されること、市町村の自主財源が増えないこと、ケアマネジメントが担保されること」を踏まえた上での段階的導入を求めている。

意見書の全文は以下のとおり。

1.居宅介護支援事業者の指定権限の市町村委譲は時期尚早である
保険者である市町村に居宅支援事業者の指定権限が付与されることにより、サービス利用抑制や指導強化につながる可能性を危惧する。
平成18年度改正において、包括的継続的ケアマネジメントの実現を目指して地域包括支援センターが設置されたが、地域における介護支援専門員に対する支援には、必ずしも十分に機能しているとは言いがたい状況であり、「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方検討会」においても従来と同様に介護支援専門員の資質について指摘を受ける要因の一つであったと言える。
市町村・地域包括支援センターの役割や機能が差異なく十分に発揮され、利用者の状態像や生活像を勘案することよりも、単に給付の多寡により事業者が評価され、ケアマネジメントに制限がかかることないように十分な準備が必要である。
少なくとも保険者(市町村)がケアマネジメントの本質を適切に理解し、利用者にとって必要なサービスが過不足なく適切に提供されるための国の研修等が行われた上で、最短でも第7 期介護保険事業計画開始時期としていただきたい。

2.地域ケア会議が単なるケアプランチェックの場とならないようにしていただきたい
地域ケア会議は、5つの機能(個別課題解決・ネットワークの構築・地域課題の発見・地域づくり、資源開発・政策形成)をもち、地域包括ケアシステムの実現に向けての有効なツールと考える。この中で、個別課題解決が単なる個別のケアプランチェックや給付抑制に主眼が置かれないように、運営マニュアルや法の明確な位置づけをお願いしたい。
ケアプランは、本人や家族、他職種との協働により、サービス担当者会議を経て合議されたものである。地域ケア会議における個別ケースの課題分析等の得られた成果により、プランの変更・修正が必要と思われる場合は、再度サービス担当者会議による検討と同意という本来のケアマネジメントプロセスに沿って行うものである。

3.保険給付を伴うサービス提供にはケアマネジメントが必須である
包括的継続的ケアマネジメントの観点から、すべての利用者においてケアマネジメントのプロセスを適正に行う必要がある。例え、福祉用具貸与等の単体のサービス利用者であっても利用者自身や家族の力、インフォーマルサービス等が考慮されており、また状態変化などのリスクについても適切かつ多角的なモニタリングが必要である。よって、今回提案されている福祉用具貸与のみのケースのモニタリングについても介護支援専門員が継続的に実施すべきである。

4.介護支援専門員実務研修受講試験の受験要件について
介護支援専門員の実務研修受講試験の受験要件の見直しについては賛同する。介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会において介護支援専門員の資質向上の必要性が指摘されており、当協会においても研修改善等に取り組んでいる。介護支援専門員の専門性を確保するうえで適切なものとなるように配慮していただきたい。

5.介護支援専門員の質の向上について
現在、当協会において、厚生労働省より介護支援専門員研修改善事業を受託し、ガイドラインの作成等の事業を実施している。また、厚生労働省老人保健健康増進等事業「主任介護支援専門員の研修制度に関する調査研究事業」を実施し、カリキュラムの具体的な見直し等を行う中で、介護支援専門員の質の向上について取り組んでいる。今後も、将来的な国家資格化も視野に入れた上での継続的な取り組みが必要である。

6.介護予防給付の地域支援事業への移行について
地域包括ケアシステムにおいて、きめ細やかな生活支援サービスが提供されることは非常に重要なことであるが、介護予防給付の地域支援事業への移行については、市町村による取り組み状況に差異が大きく、現場や利用者にも混乱が予測される。少なくとも予防給付の財源がそのまま移行されること、市町村の自主財源が増えないこと、ケアマネジメントが担保されること。これらを踏まえた上での段階的導入をすべきである。

7.ケアマネジメント評価の見直しについて
インフォーマルなどの地域資源を積極的に活用することを促進していく観点からも利用者支援にあたって、ケアプランの位置づけられたサービスがインフォーマルのみであり、結果として給付管理が発生しない場合であっても介護支援専門員のケアマネジメントを適切に評価する仕組みづくりの検討をお願いしたい。

8.介護支援専門員とケアマネジメントの公正中立性について
利用者本位で、自立支援に資するケアマネジメントを実践していく上では、介護支援専門員の公正中立性の担保が不可欠である。介護サービス等の事業主体等によっては、営利性が高く、その経営・運営上の意向や圧力等に左右されることも少なくない。居宅介護支援事業所や介護支援専門員の公正中立性が確保され、利用者本位のケアマネジメントが提供できる体制づくりをお願いしたい。

◎一般社団法人日本介護支援専門員協会
http://www.jcma.or.jp/