厚生労働省は25日の社会保障審議会介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、一定以上の所得がある高齢者の介護保険の自己負担割合を1割から2割に引き上げる案を示した。会合では、ほとんどの委員が「2割引き上げ」案に賛同。今後、厚労省では、同案の2015年度からの実施を目指し、来年の通常国会に提出する予定の介護保険法改正案に盛り込む方針だ。ただ、併せて示された「一定以上の所得」に関する基準案については、異論が相次いだことから、引き続き同部会で検討する予定だ。

 介護保険の自己負担割合については、同制度の創設以来1割で据え置かれてきた。一方、少子・高齢化の進行に伴い、現役世代が負担する介護保険料が増え続けている上、高齢者の中でも介護サービスを利用しないまま一生を終える人も多い。こうした状況を受け厚労省では、世代間や世代内の負担の公平性を確保し、介護保険制度の持続可能性を高めることを目指し、高齢者にも能力に応じた負担をしてもらう制度を導入することを提案した。

 案では、65歳以上の高齢者のうち一定以上の所得がある人について、自己負担を1割から2割に引き上げるとしている。一定以上の所得の基準については、公的年金等控除や基礎控除などを差し引いた年間の所得が「160万円以上」か「170万円以上」の2案が示された。同じ世帯内に複数の被保険者がいる場合、所得が基準を超えている人だけが2割負担の該当者となる。なお、160万円以上の基準が適用された場合、65歳以上の5人に1人は、2割負担の対象者となる。
 
 この提案のうち2割負担の導入については、ほぼすべての委員が賛同。しかし、「一定以上の所得」の基準案については、異論を唱える委員が続出した。

 齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会理事)や内藤圭之委員(全国老人保健施設協会副会長)、結城康博委員(淑徳大教授)らは、2割負担の基準について、医療保険で「現役並み所得」があると見なされる額(被保険者単身世帯の場合、前年の収入が383万円以上、被保険者複数世帯の場合、前年の収入の合計が520万円以上)に合わせるべきと主張。一方、土居丈朗委員(慶大教授)や布施光彦委員(健康保険組合連合会副会長)らは、厚労省の示した案のうち160万円以上の基準を導入すべきとした。また、岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は「将来は、すべての課税対象者の自己負担を一律2割にすべき」と訴えた。一定以上の所得の基準案については、来月の同部会で引き続き検討する予定。

■低所得高齢者の保険料負担軽減も提案―厚労省

 この日の会合では、65歳以上の高齢者のうち、生活保護を受給している人や所得が低い人の介護保険料の負担をさらに軽減する案も示された。案では、▽現在は保険料の半額が支払い免除となっている生活保護を受給している人などについて、免除の割合を7割まで拡大する▽現在は2.5割分の保険料が免除されている人の軽減については、収入に応じて3割もしくは5割まで拡大する―としている。また、保険料の段階設定については、現在の6段階から9段階に見直すことも示された。(CBニュース)