利用者離れが起きないか-。厚生労働省が社会保障審議会介護保険部会に示した高所得者の介護サービス利用負担割合の引き上げ案。支払い能力に応じた負担を求める改正に、「富裕層の負担が増えるのは仕方ない」との声が聞かれる一方で、利用控えや地域格差拡大に心配の声も上がる。

 社会保障制度を研究するニッセイ基礎研究所の米沢慶一研究員は、「介護保険制度は歴史が浅く、見直しの合意は得られやすい。一定の所得がある人の負担増加は弱者切り捨てにならないから、社会の理解も進むのではないか」と話す。

 米沢氏によると、介護専門サイトが8月に行ったアンケートでは、「自己負担は一律1割でなくてもやむをえない」という意見に6割が賛成だったという。

 しかし、反対や心配の声もある。都内の自治体担当者は「2割負担になることで、介護サービスの利用を自粛する人が出かねない。それで状態が悪くなってしまっては本末転倒だ」と危惧する。全国介護者支援協議会の上原喜光理事長は「介護保険料は昨年値上げされており、年金減額や消費増税も待っている。負担が増えるなら、その分のメリットも示さないといけない」と憤る。

 介護保険をめぐっては、厚労省はこれまでに「要支援1、2」の軽度者向けのサービスを国から市町村事業に移す案や、特別養護老人ホーム(特養)へ新たに入所できる人を「要介護3~5」の中重度者に絞るなどの改正案を提示している。上原氏は「市町村によって財政状況や取り組み方は異なり、格差が広がる恐れがある。特養への入所が難しくなれば家庭での介護が増え、働き盛りの介護離職が増える恐れもある」とも指摘している。(産経新聞)