政府の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)は2日午前、医療、介護、年金、少子化対策の4分野ごとの改革案を公表した。介護保険で高所得者の自己負担割合(1割)の引き上げを求め、医療では市町村が運営する国民健康保険(国保)を18年度までに都道府県に移管させるべきだと指摘した。同会議はこれらの提言を報告書としてまとめ、6日に安倍晋三首相に提出する。

 同会議は既に、現役世代の負担が重い現状を改め、「年齢別」から「能力別」の負担への転換を迫る「総論」をまとめており、今回の「各論」で提言の全容が出そろった。各論は総論の理念に沿い、年齢を問わず高所得者には負担増となる改革案を列挙している。

 医療分野のうち、国保改革では「財政責任を担う主体(保険者)を都道府県とする」と明記した。広域化による国保財政の基盤強化とともに、知事に地域に応じた医療提供体制を整備させる狙いがある。地域医療に関しては、病院間の役割分担が不明確と指摘し、責任と権限を都道府県に集めたうえで病院機能を再編するよう求めている。

 負担に関わるものは、国民健康保険の保険料上限額(年65万円)の引き上げ▽医療費の自己負担に上限を設けている高額療養費の上限を高所得者はアップ(低所得者は下げる)▽平均年収が高い企業の従業員ほど高齢者医療費への支援金が増える「総報酬割り」の全面導入--を明記した。それで浮く国費については、国保再編に投入する案と、社会保障の機能強化策全体に充てる案を併記した。

 介護分野では、「一定以上の所得のある人」の自己負担を引き上げるべきだとした。2割負担を想定している。また、介護の必要度が比較的低い「要支援者」(約150万人)を段階的に市町村事業に移すとし、今の家事援助などのサービス対象から外すとした。

 年金分野では、支給開始年齢(現行65歳)の引き上げについて、「検討を速やかに開始しておく必要がある」としながらも、雇用政策の見直しと合わせて「中長期的な課題」とするにとどめた。年金の伸びを物価上昇率より抑えるマクロ経済スライドのデフレ下での実施に関しては検討項目には挙げたものの、物価目標2%を掲げる安倍政権に配慮し「検討を行うことが必要」と表現を弱めた。全体的に微修正にとどめ、「将来の制度体系」の議論は先送りした。

 なお、民主党が公約してきた後期高齢者医療制度の廃止は「十分定着している」と否定し、年金でも最低保障年金など民主党案に沿った表記は省かれた。
 ◇社会保障制度改革国民会議

 自民、民主、公明の3党合意に基づき、昨年11月、内閣に設置された。首相が任命した有識者15人で構成され、会長は清家篤・慶応義塾長。会議の設置期限は8月21日。昨年11月から公的年金、医療、介護、少子化対策の4分野を中心に19回議論してきた。提言を受け、政府は消費増税に見合う改革の工程表をつくり、順次法制化する。(毎日新聞)