政府の社会保障制度改革国民会議の最終報告書の取りまとめ作業が大詰めを迎えた。29日は総論部分の案について大筋で合意。「将来世代への負担の先送りの解消」に向け、給付の抑制と負担増の具体策を明記する。介護保険では、高所得者の自己負担を現行の一律1割から引き上げることを盛り込む方向になった。


 介護保険制度は2000年度の導入以来、自己負担を1割で据え置いている。医療保険が自己負担を段階的に上げてきたのに比べてバランスを欠くとの指摘は多い。29日の国民会議でも「医療保険同様に引き上げるべきだ」(遠藤久夫・学習院大学教授)との意見が出た。これを受け、一定の所得がある高齢者を対象に引き上げを明記する。

 政府は、医療保険並みの2割か3割への引き上げが可能か検証する。所得の目安には、保険加入者の保険料額に差を付ける基準である市町村民税の課税状況を想定。所得が高く加入者本人が課税対象となっている約1100万人のうち、夫婦の年収で300万~400万円程度を上回る所得層の自己負担を引き上げる案が浮上している。

 介護をひんぱんに使うためにサービス費が高額になるのを抑える負担上限額も、高所得者は引き上げを検討していく。

 負担増とともに給付の絞り込みも書き込む。介護の必要性がもっとも低い約140万人の「要支援者」を、介護保険の給付対象から外すことを明記する見通しだ。政府はボランティアなどを活用した市町村の生活支援事業へと段階的に移管する方向で調整する。

 最終報告書の総論部分では、社会保障の給付が高齢者世代に偏り、負担は現役世代中心だった現状を改めると明言。お年寄りだけでなく、若い人も含めて全世代を給付対象とする。

 高齢化で膨らむ給付に見合う負担がないまま、財源不足を国の借金で将来世代につけ回しする現状を問題視。「今の世代が応分の負担を受けるようにする」(国民会議会長の清家篤・慶応義塾長)のを明確にする。

 29日は各論部分では骨子案のみ提示。社会保障4分野のうち少子化対策を冒頭で取り上げ、年金にも触れるが、医療・介護に重きを置く。(日経新聞)