ケアマネの間で、「地域ケア会議」についての関心が高まっている。
なぜ、地域ケア会議がいま注目を集めているのか。まず、ここで一度整理しておこう。

■「地域ケア会議」に関するこれまでの流れ
地域ケア会議は、もともと平成18年に地域包括支援センター(以下、地域包括)が設置された際に、「地域包括支援ネットワーク」を構築する一つの方法として、地域包括の事業内容に位置づけられていたものだ。「地域包括支援ネットワーク」は、今でいう「地域包括ケアシステム」を支える一つの要素である。それが、昨年度開催された「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会(以下、「あり方検討会」)」において、特に埼玉県和光市での開催手法とケアマネ支援・育成機能がクローズアップされ、地域ケア会議の機能強化が、「あり方検討会」での議論をとりまとめた「中間的な整理」 (平成25年1月7日公開)に明記されることとなった。

つまり、有識者たちによる検討の結果、保険者機能を強化し、ケアマネの資質向上やケアマネジメント支援を図っていくために、地域ケア会議を活用していこう、ということになったのである。もちろん、地域ケア会議の目的と機能はそれだけではないが、それについてはまた後でまとめることとする。

「中間的な整理」を受けて、今年2月14日、各都道府県介護保険担当課宛に「地域ケア会議」に関するQ&Aの送付について」 という事務連絡が出された。また、平成18年に出された「地域包括支援センターの設置運営について」も、地域ケア会議の目的と機能などが付け加えられて一部改正され、4月1日から適用となった。改正内容については「介護保険最新情報」 vol.325 で告知されている。

また、200ページを超える長寿社会開発センター作成の『地域ケア会議運営マニュアル』 や、このマニュアルに沿って作られた「平成24年度地域包括ケア推進指導者養成研修(ブロック研修)資料」 のほか、模擬会議の進行に合わせて重要なポイントを紹介した研修用のビデオ「地域ケア会議」における司会者の役割について (約22分)も、インターネットで見ることができる。
厚生労働省の、地域ケア会議にかける並々ならぬ熱意が感じられるライナップである。ただ、研修用ビデオなどは、こんな内容でよいのか、という固定的なイメージを植え付けてしまいそうにも思うが…。

■和光市方式がスタンダードという誤解
地域ケア会議へのケアマネの関心が高まっている、もっといえば、戦々恐々の思いでこの会議がどういう形でスタートするかを見つめているのは、これがケアプラン点検の場にされるのではないか、という不安があるからだ。この不安が生じた背景には、地域ケア会議が「ケアマネの資質向上」のために使われることばかりがクローズアップされ、ケアマネの間で広まっていることがある。

なぜ、そんなことが起きているのか。
やはり、「あり方検討会」で紹介された和光市方式のインパクトが大きかったからではないか。
和光市では、全予防プランと地域密着型サービス利用者の全プランのほか、虐待ケースなどを地域ケア会議(和光市では「コミュニティケア会議」)にかけている。参加者は、地域包括のほぼ全スタッフと行政の担当者、そして看護師、理学療法士、薬剤師等の外部から招いた専門職。20~40人規模の大人数で開催されている。開催の目的は、ケース調整、ケアマネやサービス事業者のOJT、そして多職種連携。検討の過程では、ケアマネやサービス事業者の説明の要領の悪さやアセスメントの不十分さ、自立支援に資するものとなっていないケアプラン、サービス計画の不適切さを指摘されることもある。

ただ、そうした指摘を通して、ケアマネや事業者は、ケース検討の際の段取り、アセスメントの視点、自立支援や課題解決のためのケアプラン・サービス計画立案などにおいて新たな気付きが得られ、成長が促される。それが和光市方式の良さだと、コミュニティケア会議を運営している和光市保健福祉部長の東内京一氏は語っている。

「あり方検討会」を受けて開催された「公開ケア会議」でも、東内氏が司会進行役を務めたこともあり、和光市方式への注目はいやが上にも高まった。その結果、和光市方式が地域ケア会議のスタンダードであり、多職種が集まる場でケアマネジメントのあり方がチェックされるかのようなイメージが一人歩きしている感は否めない。

しかし実は東内氏も、ケアマネの資質向上以前に保険者機能の向上が課題と語り、保険者がいかに力を付けてケアマネ支援をできるかでケアマネの資質は大きく変わってくることを指摘。また、和光市ではこの会議が、個別ケースの検討を市の介護保険事業計画立案につなげていく機能を果たしているとも語っている。にもかかわらず、どうもこうしたことがすっかり抜け落ちて、一部のケアマネや介護関係者には「地域ケア会議=ケアマネの資質を向上させる場」であるかのように思われているらしい。
*参考資料 『月刊ケアマネジメント』 2012年8月号P6~13 「保険者を味方にすれば地域ケア会議が変わる」

■開催を義務づけられた特定の会議だという誤解
では、地域ケア会議は上記の通知等々ではどう位置づけられているのか。簡単にまとめてみると、以下のような目的と課題で開催されることとされている。

▼目的
・ケアマネによる自立支援に資するケアマネジメントの支援
・地域包括支援ネットワークの構築
・個別課題分析を蓄積することでの地域課題の把握

▼機能
・多職種協働による個別課題の解決を通したケアマネのケアマネジメント実践力向上
・地域の関係機関の連携強化を図る地域包括支援ネットワークの構築
・個別ケースの課題分析集積による地域課題の発見
・インフォーマルサービスなど地域づくり・資源開発
・地域課題解決のための政策立案・提言

地域ケア会議は、上に挙げた機能を網羅するために、これまで各地域で開催されてきた会議に加え、不足している機能を補う会議を新たに開催していくこととされている。つまり、目的や機能に応じて開催される複数の会議を総称したものなのだが、何か特定の会議を指していて、今回、その会議開催が義務づけられることになったという誤解も多い。

そもそも、地域ケア会議は地域の実情に応じて開催されるべきものであることから、現在、各地域ではこの会議をどのように開催していくか、具体的な検討が進められている。そんな中、7月19日、横浜市介護支援専門員連絡協議会では月例の会議に横浜市健康福祉局の職員を招き、地域ケア会議についての意見交換を行った。

そこでは、会議の目的や運営方法等について、居宅介護支援事業所のケアマネや地域包括勤務のケアマネなどから様々な疑問や意見が示された。(ケアマネジメントオンライン)