厚生労働省の秋葉副大臣は6月、厚労省の研究班のレポート発表を受けて、認知症の施策について定例記者会見で発言した。

研究班が発表した報告によると、平成22年時点の全国10カ所の都市部での調査に基づき、65歳以上の高齢者人口約2,874万人における認知症有病率は15%、約439万人であると推計された。この中には、認知症を発症して介護保険制度を利用する「日常生活自立度II」以上の高齢者約280万人とともに、軽度の認知症である「日常生活自立度I」の人及び、要介護認定を受けていない高齢者約160万人が含まれている。それに加えて認知症の予備軍であるMCIの人が13%、約380万人いることも推計された。ちなみにMCIとは、認知機能が正常でもなく認知症でもない中間の状態の人で、MCIの人すべてが認知症になる訳ではない。

昨年、厚労省が認知症の数として発表した「280万人」というのは実際に認知症を発症した「日常生活自立度II」以上の高齢者だけを対象にしたもので、今回はそれよりも範囲を広げての調査となり、認知症予備軍とも言える約160万人と軽度認知症約380万人がプラスされたことになる。この数字に対して、秋葉副大臣は「非常に大事だ」と強調する。そして、「難しいのは、380万人と推計されるMCIが大きな予備軍であること。アルツハイマー病は症状が発症する20年前から、原因となるアミロイドベータたんぱく質が蓄積され始め、全員ではないものの、60歳過ぎぐらいに発病する可能性がある。進行を予防する研究も進んでおり、早期診断、早期対応をはじめとする正しい知識を国民全体に広め、予防することが重要になってくる。今回の研究発表でそれを再認識した」と発言した。

そして、厚生労働省が今年度から開始した「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」でも提唱されている「認知症サポーター」の養成を2017年までに600万人、2025年に1,000万人に増やすことを目標に掲げていることや、 本人・家族、専門職、地域住民など誰もが参加できる「認知症カフェ」を全国各地に広めることなどを提唱。「認知症カフェ」については、「御本人が楽しめる場として活用すると同時に、家族のストレスの緩和、専門職、地域住民同士の交流により、お互いの相乗効果が認められている」との期待を寄せる。

そのほかに取り組みたい事項として、以下のようなテーマについて説明があり、「この後、75歳以上の高齢者の認知症比率は人口比率の1.何倍かで増えていく可能性がある。認知症への正しい理解のための強化を、ナショナルプロジェクトとして取り組んでいきたい」と訴えた。

【関係機関のネットワーク作り】
日常生活圏での認知症の人々の見守りを含めた、自助、互助のネットワーク作りを「国レベル」で機運を盛り上げながら、これまで以上に連携を強化して取り組みたい。早期発見、見守りの取り組みの成功例である、神戸市東灘区での関係機関による定期的な情報交換などのネットワーク作りを参考にして広めていきたい。

【先端医療の保険適用】
現在、認知症の先端医療においては、アルツハイマーの原因であるアミロイドベータタンパクが脳に蓄積されていると黄色く映し出され、認知症を発症すると黄色い部分の一部が赤くなって見られるため、客観的な診断につながっている。早期に診断がつくことは、特にボーダーラインの人にとっては関心が高いものであり、将来的には、脳ドッグの一環の中で、保険適用でやれるようになればよいと思う。

【先端医療の研究】
アルツハイマー病治療法として有力視されている、アミロイドベータタンパクを取り除く研究をすすめていく。そのための予算を確保してスタートさせている。それ以外の認知症も含め、研究のレベルアップを図っていきたい。また、大学、病院等の全国の研究機関をネットワーク化して、情報の一元化を図り、日本の知識を結集して進めていくことで、大きな力を発揮していくことが大事。2025年をゴールに、認知症の根本治療の方法の実用化を目指す。

【若年性認知症】
高齢者の認知症とは違ったきめ細かいフォローや支援メニューが求められているが、現状では必ずしも十分ではなく、その必要性を感じている。(ケアマネジメントオンライン)