市民社会福祉オフィス・ハスカップは、6月5日、ハスカップ・セミナー2013(No.02)として、公益社団法人認知症の人と家族の会副代表の勝田登志子さんをゲストに招き、「どうなる? 介護保険 社会保障制度改革と介護保険」を開催した。

勝田さんは富山県保険医協会設立時から事務局に勤務。1982年、公益社団法人認知症の人と家族の会富山県支部設立し、2005年には本部副代表に就任し、海外のアルツハイマー病の国際会議などにも出席。2006年からは厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会・介護保険部会委員として介護保険改正に本人・家族・介護従事者の声を届けている。

セミナーでは、社会保障制度改革国民会議など、現在進められている改革のなかで、安倍総理が語った「社会保障費は聖域にしない。必要であればどんどん削る」という発言から始まった。そして溜息とともに、「私たちは住み慣れた地域で安心して暮らしたいだけなのに、そんなささやかな望みすらかなえられないのでしょうか」と、国への不信をあらわにした。

認知症に関しては先ごろ、認知症の患者数が大幅に修正され、昨年まで305万人で、65歳以上高齢者の10人に一人という数字だったが、今年の患者数は462万人となり、65歳以上高齢者の15%が認知症という数字に修正されたことを取り上げた。そして、「認知症は初期の対応ほど大切であると、私たちは長い間訴え続けてきました。重度化させないことこそが、家族も疲弊せず、お金もかからないことだと」と、同回の長い歴史に裏打ちされた真実を述べた。

「認知症の人と家族の会では、1980年の創設以来、認知症がまだ「痴呆症」と言われていたころから、本人と家族の立場に立った活動を続けてきました。現在では沖縄を除く全国に支部があり、認知症の症状で悩む家族の電話相談に応じています。その数は年間およそ2万件以上にものぼります」と勝田さん。

また、認知症介護の大変さは、要介護度に比例せず、軽度でも(軽度だからこそ)家族は対応に戸惑う。だからこそ同会は、コンピュータに判断を依存するような認定調査の廃止を訴えてきた。

「私たちは33年間、民主的に運営してきたなかで、介護保険ができて、家族介護から社会介護へと変わったときは、これで家族が救われると思いました。しかし、実際には制度は改正のたびに悪くなっています」と、介護保険ができて13年経っても、認知症の人の介護の大変さは軽減されていないことを嘆いた。

そして、最近掲載された地方新聞の社説の一節を紹介し「厚生労働省の介護保険の見直しは、ゲームのルールを途中で変えるようなもの」と訴えた。

勝田さんは、急激にその数を伸ばしているサービス付き高齢者向け賃貸住宅(サ高住)についても触れ、「現在、国は1床あたり100万円の補助を出し、12万床まで増やすと言っているが、施設からから在宅へ戻るはずの高齢者をサ高住に入れて、そこでは介護職員がニワトリ小屋のように24時間ぐるぐるとまわってオムツを交換するようなシステム」と一刀両断。到底、認知症の人の介護にはふさわしくないと指摘した。

また、財源問題で、社会保障審議会等で意見が出ている、「高額所得者は2割負担」という意見に対しては、「もし2割負担が本当に実施されたら、現状の利用者はサービスの利用を半分にするだろう」と憂いた。「2年後には消費税が10%になる。その一方で、介護保険料の引き上げ、サービス給付の抑制などということは道理に合わない」と嘆いた。

勝田さんは、介護保険法の改正や介護報酬を具体的に審議する社会保障審議会のメンバーの一人だが、利用者の立場になって考えるべき制度なのに、利用者の声を代弁できる委員は、20数名いる委員のなかでは勝田さんともう一人の、わずかに2人。
他の委員は、自ら所属する団体の利益を守るような発言もあるなか、勝田さんは、いつも一番に発言し、利用者の声を代弁してくれる。しかし、その一方で、学識経験者などの専門家でないことで、微妙に区別されるなどの悩みもあるという。
それでも、「軽度者切り」をはじめ、現在審議されているさまざまな問題をひとつひとつ検証し、「制度改悪」になり介護保険を後戻りさせないために、声を上げ続ける、と結んだ。(ケアマネジメントオンライン)