厚生労働省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」(座長=大森彌・東大名誉教授)は20日、第1回の会合を開いた。この日は厚労省が、首都圏や大阪府、愛知県など、大都市とその周辺で高齢者人口が増え続けることなどを説明。その上で、都市部での高齢者向けのサービス提供体制の確保や介護保険における住所地特例【編注】の適用範囲など、今後の主な議題案を提示し、了承された。

 この日、厚労省は主な議題案として、▽都市部の高齢者数の見通し▽ボランティアや商店街、コンビニエンスストア、郵便局などを利用した都市部での高齢者向けサービス提供▽都市部における特別養護老人ホームや居宅サービスなどの整備の課題把握と推進方策▽都市部の高齢者を地方で受け入れる場合のモデルの提供▽住所地特例の適用範囲など、社会保障費用の負担の調整-などを提示、了承された。

 このうち、住所地特例の適用範囲にはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の多くが含まれていない。そのため、特に首都圏の自治体などから、「サ高住の急増に伴い、都内から高齢者が移り住むようになれば、介護保険財源が圧迫されかねない」との声が上がっており、今回の検討会でも、その適用範囲にサ高住を含めるかどうかが議論される見通しだ。

 今後、同検討会では、これらのテーマについて、自治体関係者や有識者、サービス提供者らを招いてヒアリングなどを実施。9月には意見を取りまとめる方針だ。

 この日の検討会では、委員からのプレゼンテーションが行われた。藻谷浩介委員(日本総合研究所調査部主席研究員)は、日本に続いて中国や韓国、シンガポール、欧州なども高齢者が増え、現役世代が減る局面に入ると説明。「日本がこの問題を解決しないと、世界のどの国も解決できないのではないか」と危機感を示した。
 高橋紘士委員(国際医療福祉大大学院教授)は、「(団塊の世代の子どもが高齢者となる)2060年まで視野に入れて検討すべきではないか」と指摘。馬場園明委員(九大大学院教授)は、健康なうちに入居し、人生最期の時までを過ごす高齢者のための米国の生活共同体「CCRC」を紹介。そのシステムを基に、日本版のCCRCを提言する必要があると述べた。熊坂義裕委員(盛岡大教授)は、都市部の高齢者を地方で受け入れる場合について、「要介護状態になってからでは難しい。退職した時点からの転入が望ましい」と指摘。財政的にも工夫が必要とした上で、「例えば都会に10年以上住んだら、負担は都会の自治体がするということを制度化してはどうか」と提案した。また、岡田輝彦委員(横浜市健康福祉局長)は、「高齢者に介護予防を勧める際、介護予防と意識せずに取り組めるような工夫が必要」と述べた。(CBニュース)