第43回社会保障審議会介護保険部会レポ―ト、後半は、社保審委員がそれぞれ自らの立場から、国民会議での議論の報告書に対して、意見や所感を述べた。今回は、その発言から主な内容を紹介する。

■「軽度者外し」や「リハビリで改善」に異論が多出!
勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、「国民会議ではさまざまな専門家や職能団体からの聞き取りを行っているが、利用者からの聞き取りが全くない。サービス提供事業者からの視点も欠けている」と、そもそも国民会議の報告書自体が片手落ちであることを指摘。

それに対して、老健局の原局長は、「国民会議の議論は、検討項目について出された意見の要旨を報告したもの。今後、少子化、年金の議論に取り掛かり、その後医療に戻る予定。
大きな方向は国民会議で行い、具体的内容はそれぞれの部会で話し合う」と、利用者などのヒアリングは、社会保障審議会の部会、分科会で行われることを示唆した。

斎藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会理事・事務局長)は、国民会議の報告書に、介護給付からの軽度者除外を示唆する文言があることを受け、「軽度者を除外すれば、地域格差がますます広がる」と発言。また、「デイサービスは重度化予防に効果のある給付に重点化」という報告を受け、「利用者にとっては現状維持だけでも大変なのに、改善することは厳しい」と述べた。

斎藤正身委員(医療法人真正会理事長)も、「リハビリの効果に“改善”を求めるのは無理がある。高齢者はリハビリ病院で限界まで頑張って、家に戻ってくる。そんな人たちに“これ以上よくなれ”というのは……。デイの役割はリハビリではなく、多目的であることが大切。フォーマルなサービスだけで改善まで求められるのは厳しい」と、リハビリ効果に過剰に期待している報告書に異議を述べた。

結城康博委員(淑徳大学総合福祉学部教授)は、「国民会議では、介護は真剣に議論されていない。軽度者の位置づけは、要支援と要介護1は症状の違いは微妙だが、サービス面ではかなり違う。自己負担割合の問題では、医療と介護保険では、そもそも利用期間が異なる。私は、介護保険は半分福祉だと思っている」と持論を述べた。

久保田政一委員(日本経済団体連合会専務理事)は、「軽度者外し」に対して、財政面を憂慮し、「財政は限界にきている。高齢者がすべて弱者というわけではないのだから、軽度者は地域(支援事業)に移行してはどうか」と経済人らしい意見を述べた。

■医療介護の未来は暗く、夢がない?
大西秀人委員(全国市長会介護保険対策当別委員会委員長・高松市長)
は、保険者としての立場から、「保険料が現状の4700円から5800円になって、本当にそれでいいのか。抜本的な改正がないと持続可能な制度にはならない。現実的に、もっと突っ込んだ議論が必要」と、介護保険料の高騰を危惧。また、収入に応じた応能負担については、「利用者の資産をどうやって調べるのか。市町村の負担が大きくなるだけ」と現実には実現困難であることを指摘した。

高杉敬久委員(日本医師会常任理事)は、「この報告書を見る限り、(医療・福祉には)将来の夢がない。先の未来を描けない」と、超高齢社会や財政逼迫に、制度が追いつけていない現状を指摘した。

河原四良委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン顧問・政策主幹)は、「この改革は、誰もが痛みを伴う。しかし、介護業界はこれから働く人の取り合いになるのに、この報告書のまとめ方では、暗いものになる。 “社会が介護を支える”というなら、働く人が意欲を持って働けるように、人材面でも“介護職は社会の財産”と言えるくらいにしてほしい」と、国民会議の議論が、現場で「絵に描いた餅」になることを危惧した。(ケアマネジメントオンライン)