有料老人ホーム「アライブ世田谷代田」は2月14日、ケアマネジャー向けセミナー「介護保険報酬改定も踏まえた!居宅介護支援の手法」を開催した。講師は、介護コンサルティングを数多く手がける、株式会社ねこの手代表取締役の伊藤亜記氏。

今回は特に、実地指導で問われる視点を踏まえ、自立支援型ケアプランを作成するプロセスとその留意点について講義を行った。

■実地指導で問われる「連携」とは
居宅介護支援事業所の監査にもたびたび入っている伊藤氏は、平成24年度の改正から、他業種連携がクローズアップされていることを指摘。
「指導検査でも、連携がスムーズに行われているかどうかを見ます。そのため、実地指導では利用者の通所や訪問の履歴も、紐づけてみています」と語る。つまり、連携の書式に不備があれば、当然、連携先の事業所にも指導が入ることになる。

そこで、連携でミスしないための「記録の残し方」について、アドバイスした。
ケアマネジャーの一日の業務は、電話に訪問、事務作業と多岐にわたり、その中ですべての件を記録に残すことは難しく、なかでも電話は、双方の感情如何で内容にブレが生じることもある。
仕事でよく問題になるのが、電話など口頭での「言った」「言わない」の水掛け論。そうした事態を避けるためにも、他事業所などとのやりとりの際には、電話で済ませて終わりにするのではなく、「必ずFAXかメールで情報をもらうこと。『了解です』の一言でも、メール等でのやりとりで証拠を残すことが大切」だと語った。

こうしたことは、ご利用者の現場でもいえることで、伊藤氏が関わった例では、ご利用者のお宅に連携事業所分の連絡ノートがあったという。
「サービス提供事業所からも、“ノートに返事を求める記載をしても、なかなかご家族が書いてくれない”と言われていたが、何冊もあるノートのすべてに目を通し、返答する余力は家族にはない。そのため、連絡ノートは複数の事業所が入っていても1冊に集約し、共有すること。この方がご利用者の状態も把握しやすくなり、家族もコメントしやすくなる」。そして、こうしたアドバイスはケアマネジャーからもどんどん提案していい、と伊藤氏。

この「共有ノート」があれば、サービス担当者会議以外でも、現場での情報共有ができるうえ、ケアマネジャーが関わらない間のご利用者の様子を知る手掛かりともなる。そして、このノートに目を通すこと自体が、ケアマネジャーが連携を重視している証左ともなる。

さらに、連携していることを確実に形に残すためには、常にサービス提供事業所の支援計画のコピーをもらっておくことも必要だと指摘した。

■自立支援=「家族の希望」ではない
ケアプランに関しては、支援計画を立てる際、本人や家族から「あれもこれも」と、使いたいサービスをリクエストされ、それに応じることが「利用者本位」のケアマネジメントだと勘違いしているケアマネジャーはいないだろうか。福祉の世界にはなにかにつけすぐに「かわいそう」という気持ちが先立ってしまい、利用者の希望を受け入れてしまう人が多いことは否定できないと伊藤氏は指摘する。

しかし、自立支援とは本来、「ご利用者が生活するうえで、自らができることをいかに増やすか」ということであり、ケアマネジャーが考えたケアプランをご利用者や家族が受け入れない場合でも、「介護保険は税金で成り立っている制度ですので、プランにしたがっていただかないと」とはっきり伝えることも必要だと伊藤氏は言う。

「モニタリングの際のご利用者ニーズが“このまま継続で”だったり、ご家族のニーズが“長生きさせたい”などとあるのを目にしますが、こんなのニーズでもなんでもないですね」と厳しく指摘。こういう記録の取り方も、監査の対象になりやすいという。
「ニーズはもっと具体的に書かなければならないし、そのためにはケアマネジャーも『介護保険は元気になるための制度』であり、『自助努力がないと成り立たない』制度であることをご利用者にしっかり伝えることが大切です」。
そして、ありがちな「このまま放っておいてほしい」人には、介護保険は使えないことを、ケアマネジャーはもっとしっかり伝えるべきとも語った。(ケアマネジメントオンライン)