厚生労働省は21日、社会保障審議会の介護保険部会に、介護分野における課題として「地域包括ケアシステムの構築」と「介護保険制度の持続可能性の確保」を示し、合わせて今後の検討事項も提示した。2015年4月の制度改正を見据えたもので、検討事項には、一定所得以上の利用者の負担の在り方や多床室の給付範囲等が示されている。今後、介護保険部会では、社会保障制度改革国民会議と並行して議論を進め、今年秋をめどに意見を取りまとめる方針だ。

 「地域包括ケアシステムの構築」では、具体的な課題として、出来る限り自宅での生活が継続出来るサービス提供体制の充実と、認知症の人が地域で生活を継続するための施策の推進、質の高いサービスを提供するための人材確保と処遇改善を提示。課題に対する現状の取り組みとして、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)の創設や、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の制度化、「認知症施策推進5か年計画」の作成等を挙げた。

 また、「介護保険制度の持続可能性の確保」では、具体的な課題として介護給付の重点化・効率化と、世代間・世代内の負担の公平性の観点に立った制度の見直しを示した上で、今後の検討事項として、▽軽度者に対する給付の重点化▽自立支援型のケアマネジメントの実現に向けた制度的対応▽介護保険料の低所得者軽減強化▽介護納付金の総報酬割導入▽一定所得以上の利用者の負担の在り方▽補足給付における資産の勘案▽多床室の給付範囲-等を挙げた。


■公費負担や給付の重点化・効率化めぐり議論


 厚労省からの課題や今後の検討事項の提示に対し、結城康博委員は、介護療養型医療施設の廃止時期や要介護認定システム等についても併せて議論するべきとした上で、保険料上昇を緩和するため「介護保険財政における公費負担割合を引き上げるべきではないか」と述べた。


 一方、土居丈朗委員は、「(保険料の負担抑制のために)公費負担引き上げを逃げ道にするげきではない。財源はどこから持ってくるのか」と指摘。保険料上昇を抑制するためには、より給付の重点化・効率化を図るべきとしたほか、補足給付における資産の勘案には「固定資産を勘案出来る道筋をつけるべき」と述べた。岡良廣委員は、介護給付の重点化と効率化に関し、「要支援の思い切った適正化と自己負担割合の見直しが必要」と述べた。


 また、藤田登志子委員は、昨年4月から導入された24時間訪問サービスと複合型サービスが厚労省の当初の見込みより、普及していない点を問題視し、厚労省にその要因をただした。これに対し厚労省側は、深夜の随時対応が多い等、新サービスに関する誤ったイメージが広がっている点が要因とし、今後、ケアマネージャーや自治体関係者に対し、サービスに関する正しい情報の周知を図っている方針を示した。(CBニュース)