第20回の日本慢性期医療学会が8日、福井市で開かれた。基調講演した辻哲夫・東大高齢社会総合研究機構特任教授は、生活の場に医療が及んでいないことが現在の医療の大きな課題と指摘。さらに、在宅医療まで含めた地域包括ケアシステムを実現する際には、「地区医師会と市町村がカギとなる」とし、医師会と自治体が積極的に関与すべきと訴えた。

 辻特任教授は、近い将来、日本では「人口の4分の1、あるいは3分の1が、通院するのも難しくなる」とした上で、こうした地域社会を支えるには、在宅医療まで含めた地域包括ケアシステムを構築する必要があると強調した。また、その構築には、▽かかりつけ医の負担を軽減するために、地域内で「主治医・副主治医システム」を構築▽地域医療拠点の整備▽在宅医療・看護・介護の連携体制の確立―などを実現する必要があると指摘。その実現には、「地区医師会と市町村の(地域包括ケアシステムへの)関与がカギとなる」と述べた。

 引き続き行われたシンポジウム「2012年診療・介護報酬同時改定の検証と今後の課題」では、厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓課長や、慶大大学院の田中滋教授らが登壇した。宇都宮課長は、「12年の診療・介護報酬の同時改定は、地域包括ケアシステムの実現の第一歩」と指摘。今後もその実現を目指し、報酬改定や制度改正が検討されていくとした。田中教授は、特に老人保健施設や特別養護老人ホームの報酬改定について、「機能に応じて支払いに差がついたことが特徴」とし、次の改定では通所介護も同様の観点から報酬改定が行われる可能性を指摘した。

■7対1の病床数「ニーズに合っているか疑問」-宇都宮課長

 また宇都宮課長は、一般病棟7対1入院基本料を算定する病床数が多い現状について、過去の報酬改定の結果としながらも、「本当に地域のニーズに合っているのかという問題があると思う」と指摘。その上で、「ニーズに合った医療に変えていくには、どうしたらいいのか。生活を支える医療を評価するには、どうしたらいいのか。そうしたことを、(医療現場から)ぜひ提言してほしい」と述べた。(CBニュース)