ニッセイ基礎研究所の山梨研究員は、9月11日、厚労省が6月に発表した認知症施策を受け、同研究所のレポート「研究員の眼」に、今後さらに増え続ける認知症高齢者数についての記事を寄稿している。

これによると、いくつかの自治体関係者の話を聞く限り、今回厚生労働省が発表した認知症高齢者の推計値が示す数の多さにあわてふためくことはなく、むしろ、ようやく実態に近づいてきたという反応が多いと感じたという。そして、地域の実情に応じた支援策を引き続き着実に遂行していくことが最も重要であると考えているとした。

特に着目しているのが、今回の推計には示されていない認知症高齢者の日常生活自立度「ランクI」に該当する人の数だ。以前から認知症ケアにおける早期診断・早期対応の重要性が様々に言われてきたにもかかわらず、前回も今回も、「ランクI」の該当者数についての情報は示されていない。

「ランクI」とは、何らかの認知症を有するが、日常生活ではほぼ自立している人たちのことで、今後、認知機能等が衰えた場合は、急激な状態変化が生じてくる可能性が高い。そうした人たちに対して、「認知症の中核症状が進んでしまう前に、生活上のストレスを軽減し、不安や混乱を予防したり、QOLの維持・向上を図っていくことは、認知症の重度化を予防していく上でも重要な取り組みとなる」と指摘する。

そして、認知症という診断結果を突きつけられたまま将来の不安を抱えて過ごしている「ランクI」の人たちに対して、「この時期にこそやらなければならない支援が必ずあるはずだ」と、山梨研究員は強く訴える。

また、認知症の人の多さや支援不足に気づきながら具体的な支援策につなげられない自治体の行き詰まり感がある中、『第5期市町村介護保険事業計画の策定過程に、地域診断の結果を反映できている地域は全体の2割』という調査結果にも注目している。

地域で把握した情報をいかに支援策に結び付けていくか、その施策を機能させるためにどのような仕掛けを講じていくのか、それが第6期介護保険事業の要になるのではないか。そして、「もしかしたら、ランクIの認知症の人を施策の対象に含めていくことが、認知症の困難なケースを減らしていく“近道”になるのかもしれない」と締めくくっている。(ケアマネジメントオンライン)