全国老人福祉施設大会が23日、広島市内で開幕した。全国老人福祉施設協議会(全国老施協)の中田清会長は講演で、住居とケアの提供が一体となっている特別養護老人ホーム(特養)こそ、地域包括ケアシステムの拠点として活動すべきと改めて強調。そのためにも、エビデンスに基づいた「科学的介護」を普及させる必要があると訴えた。さらに、社会福祉法人が低所得者の利用者負担を軽減する「社会福祉法人減免制度」(社福減免)をはじめとした地域貢献活動について、「各法人はさらに積極的に挑戦してほしい」と呼び掛けた。

 中田会長は、地域包括ケアについて「実現は極めて難しいという声が現場では圧倒的」と述べた。ただ、地域包括ケアの考え方そのものを「否定するものではない」とした上で、住居とケアが一体となっている特養が、地域包括ケアの拠点として機能すべきと訴えた。

 また、制度改正や介護報酬改定を通じ、政策の流れは施設から在宅へとかじが切られているとし、「その流れを『施設も在宅も大切』に変える必要がある」と指摘。そのためには、「施設だからこそできるケアのエビデンスを確立し、科学的介護を全国津々浦々の施設で実践する必要がある」と訴えた。具体的な取り組みとしては、認知症ケアなどの方法を見直すことや、看取りや口腔ケアの積極的な実施などを挙げた。

■社福減免「すべての施設で」

 社福減免については、「財務省から、社福減免を導入していない施設ほど内部留保が大きいという指摘があった」と言及。社福減免への取り組みが不十分なままでは、社会福祉法人への課税の是非が論じられる可能性もあるとした上で、「(社福減免は)100%、すべての施設がやらなければならない」と訴えた。さらに、社福減免も含めた地域貢献活動についても、「当然、やるべきこと」と強調。具体的な活動として、保育園や子育て支援センター、学童保育などを挙げた。

■内部留保「入所者が納得する説明を」-自民・中村参院議員

 全国老施協常任顧問の中村博彦・自民党参院議員は来賓あいさつで、「介護保険が成立した後、現場の実情を無視して制度がつくられてきた感がある」と、現状の制度設計の在り方を批判。社会保障制度改革の在り方を議論する国民会議について、「そのメンバーには、弱者の立場を考えることができる人が選ばれなければならない」と述べた。その一方で、「わたしたちも変わらなければならない。天下りした施設長が、のんべんだらりと運営する時代ではない」とし、特に1施設当たり3億円はあるとされる内部留保については「入所者が納得できる説明をすることが大切」と訴えた。(CBニュース)