厚生労働省は10日、現状の介護支援専門員(ケアマネジャー)の課題を解決するための対策案を、「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」(座長=田中滋・慶大大学院教授)に提案した。同検討会の議論を受けての提案で、ケアマネジャーの研修カリキュラムや研修方法の見直し、実務研修受講試験の受験要件見直しのほか、居宅介護支援事業所の指定権者を都道府県から市町村に移すことなどが盛り込まれている。

 厚労省は、これまでの検討会での議論を踏まえ、ケアマネジャーをめぐる課題として、介護保険における自立支援の考え方が十分共有されていない点や、サービス担当者会議における多職種協働が十分に機能していない点、施設におけるケアマネジャーの役割が明確でない点を指摘。ケアマネジャーの実務研修受講試験の受験要件や法定研修のあり方にも「課題がある」とした。
 また、必ずしも十分ではない点として、▽利用者や課題に応じたアセスメント▽ケアマネジメントにおけるモニタリング、評価▽医療との連携▽介護保険外のサービスのコーディネートや地域のネットワーク化▽小規模事業者の支援、中立・公平性の確保▽実践的な場での学びなど、能力向上の支援-を挙げた。

 課題への対応の方向性としては、保険者の機能強化と、ケアマネジャーやケアマネジメントの質の向上の実現などを提案。このうち保険者の機能強化の具体案としては、厚労省の通知で開催が推奨されている地域ケア会議を介護保険法上で明確に位置付けることや、居宅介護支援事業所の指定権者を都道府県から市町村に移すことの検討、主任介護支援専門員の役割と機能の見直しなどが示された。

 一方、ケアマネジャーやケアマネジメントの質向上のための具体策としては、実務研修受講試験の受験要件や法定研修の見直し、アセスメント情報からケアプラン作成までの思考過程を明確にする「課題抽出シート」の導入、現状のケアプランの実態を把握し、改善点を明らかにするための「ケアマネジメント向上会議」(仮称)の開催などを挙げた。

■「保険者への教育」望む声も―検討会の議論

 厚労省からの課題や対策案の提示を受けて行われた議論では、地域ケア会議の機能強化に関し、委員の間で意見が分かれた。東内京一・埼玉県和光市保健福祉部長兼長寿あんしん課長は、現場のケアマネジャーの質の向上を実現するためにも、機能強化は必要と主張。一方、桝田和平・全国老人福祉施設協議会介護保険事業経営委員会委員長は、地域ケア会議がしっかり活動できていない自治体では、機能を強化しても、ケアマネジャーの質の向上にはつながらない可能性もあると指摘。水村美穂子・東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長は、未熟なケアマネジメントを支援するために、地域ケア会議は大切な存在としながらも、「その機能を強化する前に、保険者への教育も必要」と述べた。(CBニュース)