5月31日、東京・虎ノ門で厚生労働省の「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第3回会合が開かれた。前回に続き今回も構成員によるプレゼンテーション(以下、プレゼンと表記)が行われた。プレゼンを行った構成員は、橋本泰子氏(大正大学名誉教授)、堀田聰子氏(労働政策・研修機構研究員)、木村隆次氏(日本介護支援専門員協会会長・日本薬剤師会常務理事)の3名である。

前回はプレゼンの時間が長引き、ほとんど議論ができなかった。今回も議論の時間は30分弱と短かったが、主任ケアマネジャーである水村美穂子氏(東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長)や、医療マネジメントが専門で地域包括ケアにも詳しい小山秀夫氏(兵庫県立大学教授)などから率直な意見が示された。検討会の内容について3回に分けて報告する。

最初の発表者である橋本泰子氏は、まずケアマネジメントという言葉の日本での初出、そこで示されていたケアマネジメントの機能から説き起こした。そして、小泉純一郎厚生大臣(当時)からカタカナ言葉を使わないようにとの命を受け、介護保険法での文言がケアマネジメントは居宅介護支援、ケアマネジャーは介護支援専門員となった経緯を披露。これを名訳だとしつつも、「介護という言葉を使ったために”ケア”が狭義の介護業務に限定された」と指摘。「これが、“生活支援”という命名であったら、いまの状況は違っていたのではないか」と惜しんだ。

施設勤務の介護支援専門員については、本来、介護支援専門員がやるべき入退所に関わる業務や地域との連携を、施設に配置されている相談員、あるいは支援相談員が担当している点を指摘。これらの職種と介護支援専門員を分ける必要があるのかという疑問を示した。

介護支援専門員の研修のあり方については、在宅ケアの経験のない実務研修受講試験合格者が少なからずいる点を挙げ、経験なしで実務研修を受講しても実務のイメージができないのでは、と懸念を示した。そして、実務研修受講前と実務研修中に現場実習を義務化することを提案した。

また、認定ケアマネジャー協会の理事長でもある橋本氏は、協会が質の高い人材育成を目指し、認定申請者の提出した事例3ケースの審査と口頭試験によって合否を決める「認定ケアマネジャー」試験の実施や、スーパーバイザー養成講座、学会発表支援塾など、独自でおこなっている活動についても紹介した。

続いてプレゼンを行ったのは、人的資源管理、介護労働政策を専門とする研究者の堀田聰子氏。堀田氏はまず、1968年に世界で初めて長期療養をカバーする社会保険制度を導入したオランダのケースマネジメント、在宅ケアについて報告。地域看護師が起業した在宅ケア事業者が低コストで利用者満足度も従業員満足度も高く、オランダでは全産業を通じて最も成長している事業者であることを伝えた。この事業者の地域看護師は約65%が学士レベル以上の高学歴。また、分業によるコスト増、効率低下を避けるため、ケースマネジメントとケアの提供をトータルに提供する体制を取っていることも併せて紹介した。

2000年代に入ってから、オランダでは国家戦略的に統合ケアにインセンティブを付ける政策がとられている点についても言及。認知症ケアもチームケアが必須である体制となり、2011年までに全国約90%の地域でケースマネジメントを含む統合ケアが提供されるようになったと報告した。

一方、日本の介護支援専門員を含むケア関連資格・職種については、各資格が担うべき役割についての長期的な展望、資格間の横の連携がないまま、評価の議論が先行している点を指摘。ケア関連領域横断のプラットフォームを構築して全体の方向性を検討していくべきではないかと訴えた。

また、岐阜県における短時間巡回訪問介護サービスの試みの中で示された目指すべき生活像「ケアミニマム」を例として挙げ、そもそも介護保険がどのような生活の質を保証する制度であるかについても、どこかで明らかにすべきではないかと指摘した。

次回は、日本介護支援専門員協会会長の木村隆次氏のプレゼンテーションについて報告する。(ケアマネジメントオンライン)

◎ケアミニマムについて(平成 22 年度 地域において 24 時間在宅ケアを可能にするための体制に関する研究 報告書