NPO法人の介護者サポートネットワークセンター「アラジン」は20日、東京都内で家族介護者向けのフォーラムを開いた。この中で講演した臨床心理士の信田さよ子氏(原宿カウンセリングセンター所長)は、母親の介護負担に苦しむ女性の事例を紹介した上で、「感情を込めず、女優をやっているつもりで介護するくらいがいい」と指摘した。

 「ケアから見える母娘の関係性」をテーマに講演した信田氏は、母親の介護に尽力するあまりに、「母親の家まで行くのがつらい」といった状況に苦しむ女性のケースを紹介。こうした自らの感情に罪悪感を持ち、さらに苦しみを重ねる場合があるとした上で、「介護は感情を込めようとしない方がいい。女優をやっているつもりで、介護という行為をするくらいがいい」と強調した。
 また信田氏は、家族介護の場では、あえて丁寧な言葉遣いをすることで距離を置いたり、話を聞く時間を区切ったりするなど、介護者の負担を減らすことも重要と指摘した。

■「悩み打ち明けられる存在が必要」
 この日はまた、「介護者が地域につながるために―それぞれが今できること」をテーマに座談会が開かれ、研究者や専門職、家族らが登壇。家族介護者が介護の悩みを打ち明けられる存在が必要との意見が相次いだ。

 文京学院大教授の鳥羽美香氏は、独身者が家族を介護する「シングル介護」が増加傾向にあると指摘。こうしたケースでは、介護の悩みを独りで抱えることなく、介護保険サービスや専門職を活用したり、地域の当事者団体などに参加したりすることが重要とした。また、多摩市さくらが丘在宅サービスセンターの保健師の小野寺ミヱ子氏は、母親の介護に疲れていた女性が、地域の「家族介護者教室」で悩みを相談したことで、負担が軽減されたケースを紹介した。このほか、母親との関係性に悩んでいたという50歳代の女性は、「本当の自分を解放できるのは、同じ思いを分かち合おうとする人が集まる場所にある」と述べ、介護者が集まるコミュニティーの重要性を強調した。(CBニュース)