5月9日に行われた「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第2回会合。ここでは、筒井孝子氏(国立保健科学院統括研究官)、東内京一氏(埼玉県和光市長寿あんしん課長)のプレゼンについて報告する。

筒井氏は、まず2001年の時点で介護支援専門員は研修不足であるという指摘があったにもかかわらず対策はなされず、2006年にはケアマネジメント実践上の課題がさらに深刻化しているという報告が出されるなど、問題が放置されてきていた実態について過去の報告書から引用して示した。

ケアマネジメントの評価については、本来、地域ケア会議等でケアプランの内容についてのチェックが行われるはずだが実際には行われていないこと、計画がどのように実施されたのかについての評価も行われていないことなどを指摘。文書として計画を評価するのは難しいが、計画が意図通りに実施されたのかという検証での評価は可能であるはずなのに行われてこなかったことを明らかにした。

また、地域連携の仕組み作りや介護支援専門員を含むサービス事業者への支援など、保険料を低く抑えるために保険者が本来、果たすべき役割を十分に果たしていない点についても鋭く指摘。保険者機能を十分に果たしている自治体では、介護保険料が低く抑えられていることをデータで示した。

アウトカムの考え方について、要介護認定の1分間タイムスタディモデルの考案者でもある筒井氏は、利用者の状態像変化を評価するには、3回以上の認定結果を用いた経時的な評価が必要であると指摘。3回以上の認定結果から状態像変化を2回以上見ることにより、要介護度の改善と悪化の両方が見られた群に対してのアプローチを検討することができると述べた。

さらに、要介護高齢者の経年変化のデータから、状態像は悪化するのがトレンドであることを示し、この悪化の速度について注目すべきであることを指摘。状態変化の速度の違いを数量的に把握することは可能であることから、そこから、たとえば、急速に悪化している群について適切でないケアが提供されている可能性を検証できるのではないかと提案した。

続いて、和光市の東内氏から、和光市がいかにして保険者機能を果たし、ケアマネージャーの専門性の確立を進めているかについての報告があった。和光市は介護予防と自立支援型マネジメントによって、要介護認定率が全国平均より約7%低い自治体である。今後も要介護認定率の上昇を5年間遅らせたいという明確な目標を持つ。そのため、在宅限界点の引き上げを意図した施策を打ち、ケアマネージャーがその施策をうまく利用するなど、保険者とケアマネージャーが一体となって活動しているという。

和光市によるケアマネジメント機能の強化のポイントは3つ。市民への制度の周知・理解の徹底、ケアマネージャーの専門性の向上、介護サービス事業者の専門性の向上であるとのこと。

実際にキーとなっているのは、保険者、地域包括支援センター職員など20名を超えるメンバーで構成されている地域ケア会議(和光市ではコミュニティ会議)である。この会議は4つの部会があり、介護予防部会では要支援1・2と二次予防の全件について検討。給付適正部会では要介護1~5から抽出して検討し、時には給付を増やすこともあるという。また、市が指定者である小規模多機能型など地域密着型サービスの部会は週1回開催され、毎回15~20件を検討するという。この会議において司会進行を行うこと、また、プラン調整を行っていくこともケアマネージャーの専門性の向上につながっているとのことである。

このほか、IADLに視点を置いたアセスメントについての和光市独自の研修の報告もあり、「生活行為評価票」によって現状評価と予後予測をできる力を付けていくこと、ニーズ・課題の適切な把握によって目標と手段の混同をなくすことなど、具体的な研修の視点が示された。そして、ケアマネージャーの専門性の確立は介護保険制度の理念・目的達成の主眼であり、そこで保険者が果たすべき役割がいかに大きいかを訴えた。(ケアマネジメントオンライン)