5月9日に行われた「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第2回会合。検討会報告最後のこの記事では、野中猛氏(日本福祉大学教授)、藤井賢一郎氏(日本社会事業大学専門職大学院准教授)のプレゼンについて報告する。

野中氏はまず、医師や看護師は技術が先にあって制度によって規制されたが、ケアマネジャーの不幸は技術が確立される前から制度があり、規制されていることだと指摘。そして、医師を厚生労働省が評価、指導することができないように、本来、厚生労働省がケアマネジャーを評価、指導するのは無理だと断じた。

ケアマネジャーは利用者とサービスとの間の仲介を行うのが仕事なのに、ケアプランを作っていくら、という仕組み自体がおかしい、どんなサービスが困っている人につながったのかで評価するべきだと指摘。

また、支援ケースを「軽く、急ぐ」「軽く、急がない」「重く、急ぐ」「重く、急がない」に4分類すると、ケアマネジメントの対象は「重く、急がない」=長く障害を持ち、十分に表現できない人々である、とも。現状では受理の判断がされておらず、来たケースをすべて受けていることも問題であると述べた。

さらにケアマネジャーの研修上の課題を、受理、アセスメント、計画、介入、モニタリング、評価に分けて提示。受理の際の適切な判断、アセスメントの際の利用者個人の持つストーリーを把握する力、推論する力、計画の際の創造性、討論する力、介入の際の利用者を教育する力、間接介入のマネジメント力、交渉力、モニタリングの指標設定等を挙げ、評価に至ってはその意義が伝わっていないので行われてもいないと指摘した。

野中氏は最後に、ケアマネジメント技術は科学的エビデンスもあり、有効な方法論であることを明言。しかし、忠実にやらないと成果が出ないにもかかわらず、日本ではこの10年間、ケアマネジメントのあり方についての適切な修正が行われず、その有効性が生かし切れていないと指摘した。現状、世界に誇れる優秀なケアマネジャーがいる一方で、そうでない者との差が広がっている、とも。問題は制度の見直し、裁量権、成果評価、報酬額など多岐にわたり、ケアマネジメント従事者の要因だけでは解決しないし、高齢者に限らない普遍的なケアマネジメント技術を指導する組織が必要であると述べて締めくくった。

最後の発表者、藤井氏は、まず専門職とは専門職固有の「技術・知の体系」と「倫理・責任」を持つことで「権限・承認」が与えられている存在である、と定義。1割以上が国家資格を持たずに受験しているケアマネジャーの試験について、専門職ではない藤井氏自身が試験問題を解いてみたところ合格ラインをクリアしたことを挙げて、国家資格を持たない人を60問の試験でチェックできるのかという疑問を投げかけ、合格後1年ぐらい、失敗から学ぶ修行期間が必要なのではないかと述べた。

現行のケアマネジャーの養成課程については、本来、専門職養成では行われるべき基礎的体系的な学習を各専門職の養成課程における学習や試験を以て代替しており、必要な資質の明確化ができていない点を指摘。体系的に学ぶ仕組みが必要ではないかと述べた。また、経験をもとにした学習を積み重ねていくことの必要性を訴え、特に同職での意見交換をしにくい1人ケアマネ事業所ではスーパービジョンの仕組みづくりが不可欠であると述べた。

さらに、ケアマネジャーとして習得すべき知識について、医療連携のための基礎的知識・視点としては、介護福祉士養成課程において高齢者の疾病についての学習は行われているが、どのような状態が疾病につながっていくかの学習がされていない点を指摘。制度観として、制度改正に際しては厚生労働省を悪者にして終わりにするのではなく、制度改変の流れや理由を理解するなど、利用者支援のミクロ的な視点だけでなく、メゾ、マクロの視点を養うことも必要であると訴えた。

最後に居宅介護支援事業所事業所規模別データの分析により、小規模事業所が多い都道府県では1つのケアプランに組み込まれたサービス数が少なく施設入居率が高いことを示した。また、利用者数40人未満の事業所(≒1人ケアマネ)が、現状、4割を占めていることから、本来、1人ケアマネとして仕事に当たるべきではない人がやっている可能性が否定できない、こうした人には日本介護支援専門員協会が関与してほしいなどの要望があった。(ケアマネジメントオンライン)