(株)ウエルビーは、4月27日、東京・渋谷で「どうなるケアマネジメント・どうするケアマネジャー-2012年介護報酬改定のあとにくるもの-」と題したセミナーを開催した。

厚生労働省でもケアマネジャーの質の向上と今後のあり方についての検討が始まっており、セミナー主催者である(株)ウエルビー代表取締役の青木正人氏は、「国の評価を待つのではなく、ケアマネジャー自らが今後について考える機会を提供するつもりで開催した」と開催意図を説明。

また、定員30名の会場に空席が目立つことについて、「セミナー開催を決めたとき、周囲から『そんなセミナーをしてもケアマネジャーは集まらない。目の前の仕事で精一杯だから』と言われて覚悟はしていたが、やはり集まりが悪い。これだからケアマネジャーはダメ、と言われるのではないか。どうして自分たちの今後について関心がないのか不思議に思う」と厳しい一言があった。

セミナーは、(株)ニッセイ基礎研究所主任研究員・阿部崇氏、(有)ナースケア取締役・菅原由美氏、田無病院医療福祉連携部長・高岡里佳氏、ケアマネジメントサポートセンター理事長・長谷川佳和氏の4人のシンポジストから、セミナーのテーマであるケアマネジメント、ケアマネジャーについて、自己紹介を兼ねた発表があり、休憩をはさんで青木氏を司会にシンポジウムが行われた。

まず阿部氏から、「公費が投入された制度の中にいるケアマネジャーは、現場の正確な情報を世の中に対して発信していく責務がある。人に言われる前に自分たちで考えていい方に変えていかないと、かえって立場は悪くなる。リスクを負うことが必要」と、ケアマネジャーにハッパをかける発言が。さらに、居宅介護支援費が他のサービス同様、利用者1割負担にならない限り、報酬改定の際、同じ土俵に立った議論はできないことや、今後、介護保険が施設ではなく在宅で重度の人を支えていく方向へとシフトすることから、ケアマネジャーの責任はさらに重くなり今まで以上にレベルアップを求められることなどを、民間研究者ならではの分析的な視点から訴えた。

続く菅原氏は、「うちでは困難症例がない。なぜかと考えたら、スタッフに『解決方法がないのが困難症例だが、うちでは話していれば解決方法が見つかるから困難症例がない』と言われて納得した」と、対応力の高さを感じさせるコメントからスタート。認知症・透析・足の壊死の男性、アルコール性肝硬変・幻覚妄想の男性、他者を拒絶する認知症・ゴミ屋敷の男性という、困難症例と思われる3人への対応を紹介する中で、その利用者に必要な最善の対応方法が何かを考えていく思考過程のあり方を明らかにした。話の中では、重要視すべきポイントの見極め、支援方法についての関係者間の合意形成の大切さなど、現職者の参考になりそうなポイントが多数示された。

高岡氏は、保険給付サービス中心のマネジメントを担う「介護支援専門員」と保険給付サービスを含めた社会資源のマネジメントを担う「ケアマネジャー」の違いから説き起こし、現状のケアマネジメントにおける課題について言及。目の前の人をいかに受容するかというソーシャルワーク技術、相手に合わせたコミュニケーションのスキル、行間を読む読解力、地域作りを担うソーシャルアクションの力、つまり、「つながる技術」と「つなげる技術」の不足ではないかと指摘した。そして、「介護支援専門員のあり方を考える以前に、居宅介護支援は本当に効果がなかったのか、利用者は困っているのか、介護支援専門員だけの問題なのかなど、介護保険制度の課題分析やプラス思考の評価が必要では」と訴えた。

長谷川氏は、まず、「ケアマネジメントが他国からどう見られているかを考えた方がよい」という、他のシンポジストとは異なった視点を提供。他国から日本のケアマネジメントが注視されている実状とともに、日本流のケアマネジメントを東南アジアに教えていくことも視野に入れて、多様な視点と知識を持つことの大切さを訴えた。また、国からの評価を待つのではなく、自らの仕事を自己評価すること、あるいは利用者やその家族からの評価に拠って立つという意識も必要だと指摘。今後は、「一流のケアマネジャーは月10万円、新人は格安など居宅介護支援サービスの自由化や、公的介護保険だけではカバーしきれない部分を民間介護保険で補うという発想、家族ケアの見直し、移民の受け入れなども必要になるのでは」という考えを提示した。(ケアマネジメントオンライン)