3月17、18日の2日間に渡り、都内のホテルグランドバレスで第14回日本在宅医学会大会が開催された。

初日のランチョンセミナー「在宅医療のための認知症管理」に登壇した、旭神経内科リハビリテーション病院(千葉県松戸市)の旭俊臣院長は、東日本大震災後の岩手県陸前高田市における心のケア活動、松戸市で行ってきた巡回型心のデイケア活動について紹介し、高齢者が孤立して引きこもり、うつ病、認知症、寝たきりになるのを防ぐ「巡回型心のデイケア、リハビリ体操」の有用性を訴えた。

旭氏は、昨年5月1日から、千葉県心のケアチームの精神科医として、看護師、社会福祉士、作業療法士、臨床心理士とともに陸前高田市で支援活動を実施。そのなかで、認知症の高齢者は、精神的に不安定になり、病院や施設に緊急入院・入所した人が多く、また、避難所での運動不足から廃用症候群になり、歩行障害、寝たきりになる高齢者も増えていたという。

さらに、9月に仮設住宅に移ってからは、ひきこもりからうつ病になる人、認知症を発症する高齢者が増え、今年2月に岩手県こころのケアセンターが開設された。旭氏らは、うつ病、寝たきり、認知症高齢者に対する巡回型心のデイケアを4月から始めるべく、臨床心理士、ソーシャルワーカー、理学療法士、介護士、ケアマネジャー、看護師などとともに準備を進めているところだ。

講演の後半では、千葉県松戸市小金原地区で4年前から行っている介護予防教室について紹介。松戸市では、急速な高齢化が進んでおり、「20年間で高齢者の割合は3倍に、認知症も一気に3倍になった」(旭氏)。

東葛北部地域リハビリテーション広域支援センターに指定されている旭神経内科リハビリテーション病院では、その活動の一環として、介護予防教室巡回指導を始めた。まず、軽度認知症(MCI)の人を早期発見する目的で、集団検診を行ったところ、325人中、軽度認知症が8人、アルツハイマー型認知症が1人見つかったという。

その後、運動プログラムと認知プログラムを行う予防教室を週に1回開催。これには、軽度認知症の4人、ボランティア指導員17人も含めて77人が参加した。また、週に1回の運動のみでは効果が期待できないため、1人ひとりに万歩計を渡し、日頃から意識的に歩いてもらうように促した。

その結果、運動機能が低下していた6人のうち、5人は改善され、そのほかにも、参加者の視空間認知、言語流暢性、体のバランスなどが改善されたという。

こうした経験をふまえて旭氏は、今後、必要なこととして次の4点を挙げた。
(1)巡回型心のデイケア:リハビリテーションと認知プログラム
(2)認知症、引きこもり、うつ病、寝たきりの人の早期発見とリハビリ・ケア導入
(3)在宅診療における患者、介護者の心のケア
(4)地域コミュニティの再構築:認知症サポーター(松戸市では「オレンジ声かけ隊」)など

講演の最後、旭氏は、「今回の診療報酬改定で医療と介護の連携、在宅医療がより重要視された。でも、医療と介護のみでは無理。地域全体でケアする方法を考えなければいけない。絆を再構築するチャンス」と述べ、締めくくった。(ケアマネジメントオンライン)