厚生労働省の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」(主査=津田弥太郎政務官)は31日の会合で、2012年度の障害福祉サービス報酬の改定案を決めた。職員の賃上げを目指す現行の助成金制度については、12年度以降は報酬内に加算を新設して継続。加算取得が困難な事業所でも処遇改善を図れるよう、一部要件を緩和した別の加算も併せて設ける。厚労省は今後、パブリックコメントを募集した上で、3月中旬までに関係告示を改正する予定だ。

 現行の「福祉・介護人材の処遇改善事業助成金」は、障害福祉サービス事業所で働く福祉・介護職員の月額賃金を1万5000円改善することを目指して創設されたものだが、11年度末で期限を迎える。このため厚労省は、助成金と同等の要件を満たせば取得できる「処遇改善加算」(仮称)を新設し、同額程度の賃金改善を継続できるようにする。同加算を取得できない事業所に向けては、要件を緩和した「処遇改善特別加算」(同)を新設。算定できれば5000円程度の賃金改善を実施できる。

 また12年度改定では、報酬の地域区分を現行の5区分から、国家公務員の地域手当に応じた7区分に見直す。上乗せ割合は、1級地18%、2級地15%、3級地12%、4級地10%、5級地6%、6級地3%、その他0%。ただし、上乗せ割合が変わる市町村については、12年度から毎年度4分の1ずつ新たな報酬に近づけていき、15年度から完全移行させる経過措置を設ける。

 さらに、改正社会福祉士及び介護福祉士法の施行で、12年度から一定の研修を受けた介護職員がたん吸引などを実施できるようになることを踏まえ、既存加算の要件を見直したり、加算を新設したりする。例えば、居宅介護や重度訪問介護などの訪問系サービスでは、「特定事業所加算」を算定するための要件に「たん吸引などを必要とする者」を追加するほか、同加算1を算定できない事業所は、介護職員がたん吸引などを実施した場合に「喀痰吸引等支援体制加算」(仮称、利用者一人当たり100単位/日)を算定できるようにする。また、生活介護でも人員配置体制加算の要件に「たん吸引などを必要とする者」を加え、加算を算定しやすくする。


■基本報酬、一律0.8%引き下げ
 各サービスの基本報酬は、物価の下落傾向を踏まえて一律に0.8%引き下げる。
 サービスごとに見ると、居宅介護では、家事援助の時間区分を見直す。現行報酬では30分未満(105単位)、30分以上1時間未満(197単位)など、30分間隔で設定しているが、新報酬では30分未満(104単位)、30分以上45分未満(151単位)、45分以上1時間未満(195単位)など、間隔を15分に短縮する。また、サービス提供責任者の人員基準については、利用者40人ごとに1人の配置でもよいとした。

 生活介護では、手厚い人員配置を評価する「人員配置体制加算」の単位数を段階的に引き下げる。09年度の前回改定以降、同加算によって費用額が大きく伸びているためで、14年度以降と現行の単位数と比べると、引き下げ率は同加算1で約20%、同2と同3で約25%。また、「11年度障害福祉サービス等経営実態調査」で収支差率の高かった定員81人以上の大規模事業所の基本報酬は、0.9%減算する。

 短期入所については、入所施設でない「単独型事業所」の収支差率が低いため、「単独型加算」を130単位/日から320単位/日に引き上げる。また、医療ニーズの高い障害者や障害児に、医学的管理や療養上必要な措置を行った場合を評価する「特別重度支援加算」(仮称、1が388単位/日、2が120単位/日)を新設。さらに、緊急時の受け入れを促すことを目的に、事業所が空床を確保した場合を評価する「緊急短期入所体制確保加算」(同、40単位/日)や、緊急で受け入れた場合を評価する「緊急短期入所受入加算」(同、福祉型が60単位/日、医療型が90単位/日)を新たに設ける。

■加算で夜間体制を強化
 12年度改定では、事業所での夜間の対応を強化する方策が多く盛り込まれた。共同生活介護(ケアホーム)や共同生活援助(グループホーム)では、夜間や深夜の連絡体制や支援体制が適切に確保されている場合を評価する加算を新設。ケアホームが「夜間支援体制加算2」、グループホームが「夜間防災・緊急時支援体制加算2」(仮称)で、いずれも10単位/日を算定できる。また、施設入所支援では、手厚い夜勤職員の配置を評価する「夜勤職員配置体制加算」が利用定員に応じて29%から44%程度引き上げられる。(CBニュース)