社会保障審議会の医療部会、医療保険部会が1日、2012年度診療報酬改定の基本方針を取りまとめました。「病院勤務医など負担の大きな医療従事者の負担軽減」など2つを重点課題に掲げ、がんや認知症対策を引き続き推進する方向性を打ち出しています。また、厚生労働省が4日公表した薬価本調査の速報値によると、現行薬価と市場実勢価格の平均乖離(かいり)率は、2年前に実施した前回の調査と同じ約8.4%でした。一方、社保審介護給付費分科会は5日、12年度介護報酬改定に関する審議報告を取りまとめました。介護職員処遇改善交付金が年度末に終了するのに伴い、介護報酬上の仕組みで処遇改善を継続することに関して、「例外的かつ経過的な取扱い」としています。(CBニュース)

■11月30日(水)中央社会保険医療協議会総会
 12年度診療報酬改定に関する厚労相への意見書について、両論併記でも提出する方針で、診療側と支払側が一致した。12月上旬に意見書をまとめる。前回10年度改定の際には、報酬引き上げを主張する診療側と、これに難色を示す支払側の溝が埋まらず、提出が見送られた経緯がある。
【中医協】報酬改定の意見書、両論併記も

 同一医療機関で一日に複数の診療科を受診した場合、初診料・再診料の算定回数を制限する現在の診療報酬上の取り扱いをめぐり、厚労省は、2つ目に受診する診療科に限り、再診料を一定の割合で算定可能とするよう提案。しかし、支払側が一定の制限を設けるよう主張し、引き続き協議することになった。
【中医協】同一日2科目の再診料の評価を- 厚労省が提案

 入院中の患者が検査などでほかの医療機関を受診する際、入院側の診療報酬が減額となる取り決めについて、精神・結核病床や有床診療所の入院患者がほかの医療機関の透析を受ける場合に限り、減額幅を縮小する案を厚労省が提示し、大筋で了承された。
【中医協】他医療機関受診の減額幅を縮小へ

 診療所などからの紹介なしに特定機能病院や500床以上の大病院などを受診した患者について、紹介率の低い大病院では初診料・再診料(外来診療料)を12年度診療報酬改定で引き下げることを厚労省が提案。委員から反対意見はなかったが、フリーアクセスの阻害につながることを懸念する声が上がった。
【中医協】紹介ない大病院受診、初再診料減- 厚労省が提案

 在宅医療における薬剤師の活用を推進するため、在宅に取り組む薬局の施設基準を新設し、診療報酬で評価することを大筋で了承した。
【中医協】在宅薬局、施設基準を新設へ

 後発医薬品の使用を促進するため、医師が薬の一般名で処方する仕組みを推進することを大筋で了承した。一般名処方への切り替えに伴い、医療機関や薬局では処方せん発行システムの改修費用の発生が見込まれるが、新方式による処方に加算を付けるかどうかは今後、検討する。
【中医協】後発調剤加算、数量引き上げへ

■30日(水)DPC評価分科会
 DPC対象病院のグループ分けで焦点になっていた「高診療密度病院群」(仮称)の医師研修要件について、国立がん研究センター中央病院と国立循環器病センターにはクリアを求めない方針で一致した。高度な医療の研修を求められる特定機能病院として共に承認されており、一定の研修機能を既に担保しているとの判断。中医協に年内に報告する。
高診療密度群の研修要件、国がんなど免除に- DPC評価分科会

■12月1日(木)社保審医療部会、医療保険部会
 12年度診療報酬改定の基本方針の最終案が両部会で了承された。重点課題は、▽病院勤務医など負担の大きな医療従事者の負担軽減▽医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化の推進および地域生活を支える在宅医療などの充実-の2つ。中医協では年明け以降、この基本方針と、内閣が年末に決める改定率を踏まえ、診療報酬の点数配分を審議する。
診療報酬改定の基本方針を了承- 社保審部会、従事者の負担軽減など重点課題

■2日(金)中医協総会
 厚労省が薬価本調査の速報値を報告。現行薬価と市場実勢価格の平均乖離率は、2年前に実施した前回の調査と同じ約8.4%だった。また、この調査結果などを基に同省が試算した12年度診療報酬改定での薬剤費全体の削減額は約5000億円(医療費ベース約1.25%、薬価ベース約6%のそれぞれ引き下げ)だった。材料価格の引き下げを踏まえた薬価と材料価格の改定率は、10年度改定(マイナス1.36%)並みになる見通し。
【中医協】薬価調査、平均乖離率は8.4%- 薬価等改定率はマイナス1.3%強か

 政府の行政刷新会議が行った「提言型政策仕分け」で、診療報酬の本体引き上げに反対する結果となったことに不満が続出。診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が、「腹を立てるよりも、無視したいくらいの思い」と不快感を表明すると、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)も、「『年に何百時間もかけて(中医協では)何をやっているんだ』というような提言。怒り狂っている」と強く批判した。
【中医協】診療報酬の仕分けに不満続出- 診療・支払側とも

 「救急搬送患者地域連携紹介加算」を算定する高次救急病院の紹介先に、療養病棟や精神科病棟を新たに加えることを厚労省が提案。後方病院との連携を強化し、救急病院が満床で搬送患者を受け入れられないケースが出るのを防ぐのが狙い。療養病棟の入院患者は、死亡退院を除くと46%が自宅に復帰しており、こうしたところにも高次救急の後方機能を期待できると判断した。
【中医協】高次救急の後方支援に療養病棟- 厚労省提案

 入院患者への退院支援を評価する診療報酬の見直し案を厚労省が提示。同案によると、患者の退院をサポートした場合に算定できる「急性期病棟等退院調整加算」と「慢性期病棟等退院調整加算」を一本化する。また、入院患者の中から自宅への復帰が難しい人をピックアップし、早期退院につなげるための「退院支援計画」を入院7日以内に作るよう求める。
【中医協】退院調整加算の一本化を提案- 早期の調整を促進

 褥瘡のある患者が慢性期の病院に入院した場合、褥瘡の治療後も一定期間に限り、診療報酬で評価することを厚労省が提案。治療やケアの質を評価する指標(QI)の公表を要件にする。同省はまた、「がん診療連携拠点病院」による連携強化を評価する案も提示。現行の「がん治療連携計画策定料」(退院時750点)の算定範囲を拡大し、ほかの医療機関に通院する退院患者に、外来化学療法などを実施した場合にも算定できるようにする内容。
【中医協】褥瘡改善後も一定期間評価を維持- QI公表が要件、厚労省が提案

 認知症治療病棟からほかの医療機関に転院した場合にも退院調整加算を算定できるよう、12年度診療報酬改定で見直す案を厚労省が提示。退院して在宅復帰した場合や、介護施設に入所した場合にしか算定できない現在の仕組みを見直すことで、認知症患者の在院日数を短縮させるのが狙い。
【中医協】認知症、転院時も退院調整評価へ- 厚労省が提案

■2日(金)中医協薬価専門部会
 10年度診療報酬改定で試行的に導入された「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を、12年度以降も継続することを大筋で了承。製薬業界側は同加算の恒久化を要望しているが、同日の部会では「時期尚早」などの意見が上がり、本格導入は見送られることになった。
【中医協】新薬加算継続も、恒久化は見送り

■2日(金)日本医師会定例記者会見
 「提言型政策仕分け」で、12年度の診療報酬改定について本体部分引き上げに反対する評価結果が出されたことに対し、「決してこのままの形で予算編成すべきではない」と反論。診療報酬全体の引き上げを求める見解を発表した。
仕分け結果による予算編成に反対- 日医、診療報酬ネットプラスを要望

■5日(月)小宮山洋子厚労相記者会見
 厚労省の社会保障改革推進本部終了後に記者会見し、同本部の中間報告に盛り込まれた先発品薬価の引き下げが12年度診療報酬改定で行われる可能性について、「まだ細かく詰めた議論を聞いていない」と述べ、民主党などの議論を踏まえて決めると説明した。
厚労省、社保改革で中間報告

■5日(月)社保審介護給付費分科会
 厚労省が提示した12年度介護報酬改定に関する審議報告案を、分科会の取りまとめとすることを了承。11月24日に同省が示した素案を修正し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)のオペレーター要件などを追記・変更した。最終的なオペレーター要件は、「夜間対応型訪問介護と同様の有資格者を1人以上配置」など。
12年度介護報酬改定の審議報告案を了承- 介護給付費分科会