厚生労働省は、11月24日、第41回社会保障審議会介護保険部会を開催した。本部会では10月から4回にわたり、介護制度の見直しについて議論を重ねてきた。今回の会議では個別の見直し項目について、賛否両論が併記されたままの事務方の文書をめぐり、委員らが各々の意見を述べた。


木村隆次委員(日本介護支援専門員協会会長)は「利用者負担の導入により、ケアプランの自己作成が増えるとケアマネジャーの専門性が無いように書かれているが、前回、私は利用者負担が導入されるとケアマネジャーと契約しない人が出てきてケアプランの作成代行が増えると意図して発言した」と事務方の表現に苦言を呈するとともに、制度的な対応を求める前に利用者負担についての調査実施を求めた。

三上裕司委員(日本医師会常任理事)は、自立支援に向けたケアマネジメントの機能強化のため、制度的な対応を求めることについて「ケアマネジメントがきちんとされているか、ケアプランチェックが必要である」と訴えた。

河原四良委員(UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン政策顧問)は、介護職員の処遇改善について「基本的に介護報酬で賄うもので、労使で決める賃金について政府が介入すべきではない」と主張した。また、本部会に先立って11月22日に開かれた政府の行政刷新会議の仕分けで、介護の効率化が強く求められたことや、民主党の医療・介護ワーキングチームが同日にまとめた制度改革素案において介護保険料の総報酬割導入が明確化されたことに触れ、「ここで問題視されていることもバンバン発表されているが、部会の意見が政府にきちんと反映されるのか」と疑問視した。

勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、利用者負担の引き上げについて“介護心中”が増えるのではと懸念し、また一定以上の所得とはいくらなのか具体的な数字を提示するよう事務方に求めた。社会保障・税一体改革において、2025年に向けて要介護認定者数を現行より3%減少と掲げられたことについては「介護予防・重度化予防というが何を指しての重度化予防か」と質問。対する事務方は、在宅・居住系サービスの充実や在宅医療との連携など地域包括ケアシステムの構築やケアマネジメントの機能強化をあげ、一定所得の数値化には回答しなかった。

葛原茂樹委員(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科特任教授)は、重度化防止に向けた利用者負担について「生活援助とリハビリで自己負担に差をつけると書かれているが、私は意志として生活援助の内容でも重度化予防に役立っていると感じているので、生活援助かリハビリかという極端な対比は違和感がある」と発言した。

これを受けて田中雅子委員(日本介護福祉士会名誉会長)も「専門職ならリハビリの意味合いも正しく理解できるが、一般の人はリハビリというと筋肉アップのイメージなので、“要支援者に対する給付内容をリハビリ中心に強化していくことが必要”との表現は誤解を招く」と指摘した。

報酬が高いほど介護保険料が高くなる総報酬割の導入については、保険組合の代表である布施光彦委員(健康保険組合連合会副会長)が「現役世代の負担は本当に大きい。医療保険も年金も、なんでもかんでも現役世代に背負わせればいいという小手先の対応では企業の発展や社会の活性化は図れない。総報酬割の導入は応能性の強化というより、財源確保のつじつま合わせだ」と社会保障の負担増に歯止めがかからない現役世代の重圧を吐露した。

大西秀人委員(全国市町会介護保険対策特別委員会委員長・高松市長)も「財政とマンパワーの2つの焦点を考えると2025年という問題ではなく、部会でどんどん具体案を出すべきだ」と喫緊の課題が山積していることを指摘した。

閉会にあたり、同省老健局の宮島局長は「社会保障・税一体改革を受けての議論をこれまで4回にわたり重ねてきたが、12月中には来年度の予算編成が決定される。同改革に沿った第6期介護保険事業計画の施行を視野に今後、議論を詰めていく」と述べた。(CBニュース)