24日の社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=大森彌・東大名誉教授)では、厚生労働省が示した「2012年度介護報酬改定に関する審議報告案」のうち、介護職員の処遇改善の在り方が焦点になった。処遇改善を介護報酬内で実施した場合、要件を満たした事業所を評価する「加算」方式をめぐり、賃金の支払いに対する公的な介入に反対する声があった一方、確実に処遇改善が行われる必要があるとして、評価する声も上がった。

 報告案では、年度末で介護職員処遇改善交付金が終了することを踏まえた12年度以降の処遇改善策について、「介護報酬において対応することが望ましい」と提言。一定要件を満たす処遇改善を行った事業者のみを評価する加算制度の創設は「やむを得ない」とした上で、次期介護報酬改定時の加算見直しにも言及している。

 この報告案に対し、委員の間で意見が分かれた。田中滋委員(慶大大学院教授)は、「収入の使い道を細かく決め、公的に監視するような体制は、非効率なシステム管理費用の上昇を招く。非近代的な状態への後戻りになりかねない」と述べ、加算方式に反対。武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「給料が安いところは職員がいなくなるので、自然(の淘汰)に任せれば“悪貨”は駆逐される。国家が介入すべきでない」と指摘した。
 一方、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員長、高松市長)は、「仮に介護報酬にするにしても、処遇改善で上乗せする部分については、確実に職員の人件費などに充てられてマンパワーの確保に資するような形で位置付けられるべき」と加算措置を主張。田中雅子委員(日本介護福祉士会名誉会長)は、「多くの介護職員は住まいの近くで就労する傾向が強い。“悪貨が駆逐される”にはならないのが現実」と訴えた。

 議論を受け、大森分科会長は「事務方と相談して皆さんの意見が反映できるように改める。次回その案文を出す」と述べた。

■賛否、新設の特養多床室の報酬減でも
 また報告案に示された、12年度以降に新設される特別養護老人ホーム(特養)多床室の介護報酬を減額する方針についても議論された。特養をめぐっては、地方分権一括法の施行によって12年度からは自治体が独自に居室定員を定められるようになるため、厚労省は居室定員基準を「4人以下」から「1人」に見直す省令改正を行っている。

 意見交換では、村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会総務・組織委員長)が、「国の基準に従わないことをもって、ペナルティーとして介護報酬を減額するのは、地方分権一括法の趣旨に反するのではないか」と述べ、文言の削除を要求。一方、池田省三委員(地域ケア政策ネットワーク研究主幹)は、「個室か多床室かは人権問題。人権問題は地方分権に優先する」とし、削除すべきでないと主張した。大森分科会長は「介護給付費分科会は(個室化推進の)立場を貫かないといけない。(報告案の)文章の若干の手直しはするが、この路線でいく」と、新設多床室の報酬を減額する方針を堅持する考えを示した。(CBニュース)