中央社会保険医療協議会(中医協、会長=森田朗・東大大学院教授)は11日の総会で、患者の外泊時、退院日、退院直後の各段階における訪問看護の課題について議論した。厚生労働省は、入院中に要介護認定を申請した患者が退院後、要介護度の判定が下りるまでの間、指示書に基づいた訪問看護を医療保険で可能にすることを提案。これに対して、診療側の賛否は分かれ、支払側からは「医療保険と介護保険の原則を変えるのか」などの反対意見が出た。

 この日の総会で厚労省保険局の鈴木康裕医療課長は、在院日数短縮化の流れの中、退院直後の患者の医療ニーズが高まっていると指摘。その一方で、入院中に要介護認定を申請しても、要介護度が判定されるまでに平均31日かかるとして、在宅移行の準備期間に当たる退院後の2週間程度、医療保険により訪問看護を提供することを提案した。鈴木課長は、「入院していなければならないような医療ニーズを、在宅に持ち込むことではない」と強調した。

 厚労省の提案に対して、診療側と支払側の委員からは、要介護認定は申請日にさかのぼって行われ、介護保険での訪問看護が暫定的に利用可能なため、医療保険への適用拡大を疑問視する声が上がった。
 診療側の嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長、山形大大学院教授)は、「今後、DPCの問題も出てくる。どうバランスを取るのか」などと述べ、医療の必要度が高い患者は、あくまで入院・外来で対応すべきとした。また、支払側の白川修二委員(健保連専務理事)も、「介護保険と医療保険の適用の原則を変えるほど重大な問題なのか、全く理解できない。医療ニーズが高ければ入院、もしくは外来というのが当たり前の話だ」として、介護保険の適用が望ましいとの考えを示した。

 こうした意見に対して、福井トシ子専門委員(日本看護協会常任理事)は、入院中のケアプラン作成が進んでいない現状を指摘。その上で、「現場から見て、1か月は必要だと感じている」と述べ、患者の再入院を防ぐためにも、慎重な制度設計を求めた。
 一方、診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「広い意味での在宅医療、訪問看護で少し療養することによって、(再入院しても)早く退院したり、介護の方にうまくつなげたりできる実例はあると思っている」とし、厚労省案に賛意を示した。

■外泊時や退院日の訪問看護も評価へ

 厚労省はまた、退院前の患者の外泊時に、訪問看護ステーションによる訪問看護が医療保険の対象外となることや、退院日に行う訪問看護は診療報酬上、当日に評価されないことを論点とし、在宅療養への円滑な移行を図るため、これらを評価することを提案。さらに、退院後に在宅医療を受ける患者に対して、入院中の医療機関の医師・看護師と訪問看護ステーションの看護師が連携して行う在宅療養に必要な指導を評価する「退院時共同指導料2」(300点)について、医療機関への算定拡大も論点とした。

 これらの提案に対して支払側の白川委員は、「それなりの看護行為をやったら、その分の料金を払うのが原則だと思うので、それに従って必要なものをきちんと評価するという方向性でよいのではないか」との認識を示した。他の委員からも特に反対意見は出なかった。(CBニュース)