厚生労働省は、11月10日、第84回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。この日の議題は、特養・老健・療養型(医療・老健)、特定施設および小規模多機能型居宅施設の基準・報酬についてと、口腔・栄養関連サービス、福祉用具についてと盛りだくさん。

ここでは当日論議された主な論点について紹介する。なお呈示された論点は決定事項ではなく、「このようにしてはどうか」と事務局より提案されたもの。

【介護老人福祉施設】
・看取り機能強化のため、外部医師によるターミナルケアの推進
特養における医師の配置については、現状、配置医師の9割以上が非常勤嘱託医で、勤務日数も月間10日未満であることから、入所者ごとの主治医など、外部医師によるターミナルを認める案。複数の委員が賛成した。

・在宅との均衡を図るため、低所得者の利用に配慮しながら多床室の室料負担を求め、ユニット型個室の利用者負担を軽減する。
具体的には、施設における原価償却費および高熱水費の水準を踏まえ、多床室の室料を試算をすると、1人当たり月額8,000円という額が示された。一方、ユニット型は「低所得者でも入所できるよう、月額1万円を引き下げるとともに細く給付を拡大する」という自治体からの要望を示した。

このほか、定員規模別報酬体系導入、要介護度別報酬の適正化、利用者負担額軽減制度による生活保護受給者の入所などが論点として示された。

【介護老人保健施設】
・在宅復帰・在宅療養支援機能の充実した施設の基本施設サービス費を新設する。
在宅復帰機能が高い老健は、低い施設に比べて在所日数が低いことから。

・在宅復帰支援機能加算は現状、退所者が非常に少ない施設でも算定可能だが、
ベッド回転率を加味し要件の見直しを図る。

・入所前に入所者の自宅等を訪問し、退所を念頭においた施設サービス計画の策定および診療方針の決定を行った場合を加算で評価する。
これに対しては、木村委員(日本介護支援専門員協会)が「文中に“ケアマネジャーが施設サービス計画の策定を行う”と書き加えてほしい」と要望した。

・入所者が軽症の疾病を発症し、施設内で対応した場合の加算を評価。
対象疾患は肺炎、尿路感染症。委員から「帯状疱疹も加えては」との意見も出される一方で、「疾患によって完治までの日数が異なるため、一律に加算での算出は不可能」という声も。

・本人が望んでいない病院搬送をせず、施設内で最後まで看取りを行った場合を高く評価。
対応としては現行のターミナルケア加算について、特に負担が大きい死亡日直前について手厚い評価となるよう報酬に傾斜をつける。

・大腿骨頚部骨折・脳卒中にかかる「地域連携診療計画」に基づき、老健が患者を受け入れ、計画管理病院に文書で診療情報を提供した場合に、介護報酬の加算で評価を行う。

【介護療養型医療施設・介護療養型老健施設】
・より医療の必要性の高い利用者を受け入れる介護療養型老健施設を高く評価するとともに、医療施設のほうは適正化を図る。
療養型施設の老健施設への転換が進まず、6年間期限を延長したことを踏まえ、療養型老健施設で医療ニーズ高い利用者を受け入れることを要件に、基本施設サービス費を新設する。

・有床診療所併設に転換する場合、一定の範囲内で療養型老健の増床を認める。
・療養型老健施設にターミナルケア加算の見直しを行い、従来型老健と報酬上に差をつける。

【小規模多機能型居宅介護】
・より利用者に身近な地域でサービス提供が可能となるようサテライト型事業所を創設する。その場合、登録定員は18人まで、本体の訪問スタッフがサテライト型の利用者に訪問することも可能。
これに対しては、本体自体の整備が遅れているで難しいのではないかとの声があがった。また、本体事業所との物理的な距離や職員の兼務など、事務局の詰めの甘さを指摘する声もあった。
 
・時限措置であった事業開始時支援加算を継続する。
整備促進がすすまない現状や、加算の算定状況や収支状況等を踏まえ、事業開始時支援加算(I)は登録手員80%を70%に引き下げ、事業開始時支援加算(II)は廃止。

小規模多機能型は普及促進が進まない現状をうけ、利用の際、現在のケアマネジャーがケアプランを手放さなくてもいいようにすべきとの意見が、複数の委員から挙がった。(ケアマネジメントオンライン)