厚生労働省は10日の社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=大森彌・東大名誉教授)の会合で、2012年度介護報酬改定で特別養護老人ホーム(特養)など介護保険3施設の多床室利用者から室料の自己負担を求めることを提案した。介護保険施設の個室化推進が狙いで、これで捻出した財源によってユニット型個室利用者の負担軽減を図る方針。

 厚労省の提案によると、多床室利用者が負担する室料は、施設の減価償却費分のうち共用スペースを除いた居室部分に相当する金額。特養では8000円程度が想定されているが、低所得者の利用者に対しては「配慮」する。これで捻出した財源は、第3段階(市町村民税世帯非課税、本人の年金収入が80万円超211万円未満)のユニット型個室利用者の負担を軽減するための原資とする。特養だけでなく、介護老人保健施設、介護療養型医療施設でも同様の対応を取る方針だ。

 また厚労省は、特養の定員規模別の報酬体系を導入することも提案した。現在一律に設定されている定員31人以上の施設の介護報酬を「31-50人」「51-80人」「81人以上」の3区分に再編し、報酬を引き下げる場合に傾斜を付ける方針。これと併せて要介護度別の報酬についても必要な見直しを行う。

 さらに、12年度以降に新設する特養多床室の介護報酬を減額する案も示した。地方分権一括法の成立で、12年4月からは自治体が独自に特養の居室定員を定められるようになるため、厚労省はこれまでに居室定員基準を「4人以下」から「1人」に見直す省令改正を行っている。このため、減額の対象になるのは定員2人以上の施設となる。

 このほかの論点としては、▽特養での看取り機能を強化するため、外部の医師によるターミナルケアを推進する▽社会福祉法人が低所得者の利用者負担を軽減する「社会福祉法人減免制度」(社福減免)を推進する―ことも示した。

 意見交換で村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会総務・組織委員長)は、多床室利用者からの室料徴収、新設多床室の報酬減額、定員規模別の報酬設定への反対を表明。齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会理事・事務局長)は、多床室利用者から徴収した室料をユニット型個室利用者の負担軽減に充てる提案について「おかゆを食べている人から料金をちょうだいして、普通食を食べる人に補てんするようなもの」と批判した。
 新設の特養多床室の報酬を減額する提案に対しては、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員長、高松市長)が「ペナルティー的なものになると、『参酌する基準』とされたものが実質的に『従うべき基準』になりかねない。慎重に検討すべき」とした。一方で、小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は「個室ユニット化を推進しているため、メリハリを付ける観点でやむを得ないのではないか」と述べた。

■口腔機能維持管理加算など要件緩和
 また、厚労省は同日の会合で、介護保険3施設の入所者に対する口腔・栄養関連の加算要件を緩和する方針を提示した。具体的には、▽歯科衛生士が介護保険施設の介護職員に対して口腔ケアに関する助言や指導を行っている場合に算定できる口腔機能維持管理加算(30単位/月)について、歯科衛生士が入所者に週1回以上の口腔ケアを行った場合も算定できるよう見直す▽医師の指示に基づいて計画を作成し、口から食事するための特別な管理を行った場合に算定できる経口維持加算(1が28単位/日、2が5単位/日)について、医師と連携した歯科医師の指示でも算定できるよう見直す―など。(CBニュース)